スマート工場で成果が出せない現場で見過ごされがちな「データ活用の前準備」:いまさら聞けないスマートファクトリー(4)(3/3 ページ)
さて、印出さんの説明を聞いて矢面さんは、データ活用の前段階についての認識を改めたようです。
なるほど。確かに「データを整える」ということについては、あまり説明できていなかったかもしれません。成果が出なければ「もっとデータを集めてみてはどうか」というように指示していましたね。
その指示はあまりよくないわね。もし、集めたデータがうまく整理できていないことが原因で成果が生まれていなかったのだとしたら、別のデータをまた集めてきたところで、不十分なデータが増えるだけなので、結果は出ないわ。
そうですよね。あらためて印出さんの話を聞いて強く思いました。
順番としては、取得したデータを整理し、足りない項目や粒度などを見つけてから、そのデータをあらためて取得するという形で進める必要があるわ。データを取得するのは大変だもの。
確かに。成果が出ないループで苦しんでいた状況が理解できました。まずはデータ整理を進めるとともに、それを簡単に進められる方法がないか考えてみます。
スマートファクトリー化を進める中で、意識しておかなければならないのは、投資と回収の関係において、回収をどこで行うのかということです。スマートファクトリー化は「データ化」「IoT化」「可視化」「データ分析」「自動制御」「自律化」のステップで進むとされていますが、基本的には「可視化」以上のステップにまで進まなければ回収につながるような成果を得ることはできません。データを取得・収集し、蓄積するところは全て投資ばかりが必要な状況だといえます。データ活用前の「データの準備や整理」についても同様です。
スマートファクトリー化のステップと投資と回収のポイント(クリックで拡大)出典:MONOist編集部で作成
つまり、スマートファクトリー化を進めようと考えると、このデータ化を含むデータを集めて活用する前までの作業をできる限り減らして成果を生み出していくということがポイントだといえるわけです。そう考えると、データが簡単に取得できる仕組みが整っている場合ではない限り、成果が出るか出ないか見えないものに対してやみくもにデータの収集量を増やすというのは、あまり良い手だとは思えません。印出さんの言う通り、まずは手持ちのデータを整理し、必要になる項目や粒度などを洗い出してから、データの取得方法などについて検討するという順番が合理的なのではないかと考えます。
さて今回は、見逃されがちな「データの整理や準備の難しさ」について解説してきました。次回から数回にわたって、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
≫連載「いまさら聞けないスマートファクトリー」の目次
- スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。
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製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。
- “不確実”な世の中で、企業変革力強化とDX推進こそが製造業の生きる道
日本のモノづくりの現状を示す「2020年版ものづくり白書」が2020年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2020年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では、“不確実性”の高まる世界で日本の製造業が取るべき方策について紹介する。
- エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。
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労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。
- 自律するスマート工場実現に向け、IoTプラットフォーム連携が加速へ
製造業のIoT活用はスマート工場実現に向けた取り組みが活発化している。多くの企業が「見える化」には取り組むが、その先に進むために必要なIoT基盤などではさまざまなサービスが乱立しており、迷うケースも多い。ただ、これらのプラットフォームは今後、連携が進む見込みだ。
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