さて、印出さんの説明を聞いて矢面さんは、データ活用の前段階についての認識を改めたようです。
なるほど。確かに「データを整える」ということについては、あまり説明できていなかったかもしれません。成果が出なければ「もっとデータを集めてみてはどうか」というように指示していましたね。
その指示はあまりよくないわね。もし、集めたデータがうまく整理できていないことが原因で成果が生まれていなかったのだとしたら、別のデータをまた集めてきたところで、不十分なデータが増えるだけなので、結果は出ないわ。
そうですよね。あらためて印出さんの話を聞いて強く思いました。
順番としては、取得したデータを整理し、足りない項目や粒度などを見つけてから、そのデータをあらためて取得するという形で進める必要があるわ。データを取得するのは大変だもの。
確かに。成果が出ないループで苦しんでいた状況が理解できました。まずはデータ整理を進めるとともに、それを簡単に進められる方法がないか考えてみます。
大変だと思うけど、頑張ってね。
スマートファクトリー化を進める中で、意識しておかなければならないのは、投資と回収の関係において、回収をどこで行うのかということです。スマートファクトリー化は「データ化」「IoT化」「可視化」「データ分析」「自動制御」「自律化」のステップで進むとされていますが、基本的には「可視化」以上のステップにまで進まなければ回収につながるような成果を得ることはできません。データを取得・収集し、蓄積するところは全て投資ばかりが必要な状況だといえます。データ活用前の「データの準備や整理」についても同様です。
つまり、スマートファクトリー化を進めようと考えると、このデータ化を含むデータを集めて活用する前までの作業をできる限り減らして成果を生み出していくということがポイントだといえるわけです。そう考えると、データが簡単に取得できる仕組みが整っている場合ではない限り、成果が出るか出ないか見えないものに対してやみくもにデータの収集量を増やすというのは、あまり良い手だとは思えません。印出さんの言う通り、まずは手持ちのデータを整理し、必要になる項目や粒度などを洗い出してから、データの取得方法などについて検討するという順番が合理的なのではないかと考えます。
さて今回は、見逃されがちな「データの整理や準備の難しさ」について解説してきました。次回から数回にわたって、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
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