メイヨークリニックでは、新たなフレームワークに準拠してCOVID-19の感染源となった患者/医療従事者の特定と、他の医療従事者と接触する潜在的可能性を確認するためのインタラクションを起点に、ロチェスターを中核拠点とするOHSの医師が、暴露トリアージプロバイダー(ETP:Exposure Triage Provider)の役割を担いながら、個々の潜在的暴露を評価し、接触追跡プロセスを開始するワークフローを設定している。
次に、電子的な接触ログを、現場管理者やユニットマネジャー、またはオンサイトの労働衛生・感染症予防管理(IPAC:Occupational Health and Infection Prevention and Control)パートナーに送付することによって、暴露の発生した施設の責任主体に権限の一部が移譲される。その上で、ロチェスターにある非臨床コールセンター(NCCC:Non-Clinical Call Center)が、電子的接触ログの状況をモニタリングする一方、医師と上級プラクティスプロバイダーから成る暴露調査チーム(EIT:Exposure Triage Provider)が、暴露を受けた医療従事者に対するリスク評価を実施する。メイヨークリニックのCOVID-19に関わる労働安全衛生管理体制では、ETP、EIT、NCCCといった集中管理型チームが連携しながら、24時間365日稼働して、効率的かつタイムリーな接触追跡業務と暴露評価を保証する点が特徴となっている。
各医療従事者の暴露を評価した後、労働衛生看護チームが、業務制限を発出・管理し、兆候のある人の検査を手配する。検査結果が示されると動的なモニタリングを開始し、追加的な教育を提供する。全てのサイトの従業者がCOVID-19に関わる労働衛生課題に取り組むのを支援するために、看護師を配置した無料通話による従事者向けCOVID-19ヘルプラインを構築している。
患者がCOVID-19陽性の場合のプロセスでは、感染源となる個人が、患者か医療従事者かについて、OHSチームとロチェスターのETPが連携して潜在的暴露を調査する。感染源の個人が患者である場合、OHSのリーダーは、地域の労働衛生・感染症予防管理パートナーと組んで暴露を評価し、潜在的に暴露を受けた医療従事者を特定する。そして、患者の電子医療記録(EMR)をレビューし、患者の記録に記述された従事者のリストを作成する。他方、地域のOHSチームは、労働衛生・感染症予防管理パートナーと協働して電子的接触ログを移植し、場合によっては、完了後のログを拠点の看護マネジャーに移管する。さらに、看護マネジャーや患者医療チームが暴露を受けた医療従事者を特定した場合、その名前がログに追加される。業務完了後の接触ログは、ロチェスターに提出される。
他方、医療従事者がCOVID-19陽性の場合のプロセスでは、労働衛生・感染症予防管理パートナー、公衆衛生パートナー、または感染した従事者側の自己報告を介して、OHSがCOVID-19陽性の検査結果の通知を受ける。暴露トリアージプロバイダーは、医療従事者の伝染可能性期間や同僚が暴露を受ける潜在的可能性を確認した上で、①個人に対するヒアリングを実施する、②個人がセキュアなオンライン自己評価フォームに回答する方法を示した電子メールを送付する、のいずれかを選択する。②を選択した場合、NCCCは、従事者に電話してフォームについて注意を促し、体の具合が悪い場合や自宅から電子メールへのアクセスが困難な場合には、フォーム入力作業をオンラインでサポートする。
図2は、 COVID-19の暴露を受けた医療従事者に対する評価アルゴリズムを提示している。
このように、多職種連携による接触追跡業務プロセスを整理・可視化したアウトプットがあると、DXの本丸である、ITを活用した業務プロセスの標準化・効率化につなげやすくなる。
メイヨークリニックの場合、医療従事者向け接触追跡業務支援システムについては、ゼロベースで構築するのではなく、既存の医療従事者向け労働衛生ポータルを活用しながら、労働衛生ケースマネジメントシステム(OCM)を拡張する形で、労働集約的なプロセスの効率化・自動化を図ろうとしている。
図3は、メイヨークリニックにおける医療従事者向けCOVID-19暴露調査プロセスの全体像を示したものであり、縦軸は上から「感染症」「感染症予防管理(IPAC)」「非臨床コールセンター」「看護師」「プロバイダーチーム」「地域チーム」となっている。
なお、メイヨークリニックの場合、医療従事者の医療費は、原則として「Mayo Medical Plan」の医療保険でカバーされる仕組みになっている。米国の場合、医療提供者(Healthcare Provider)と医療保険者(Healthcare Payer)が連携した組織形態が多く、業務プロセス改革が及ぼす経済的インパクトにも敏感である。
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