産業用オートメーションを展開するB&Rでは、インダストリー4.0などモノづくり現場の新たな動きに合わせた提案を進めている。B&Rの日本法人設立は2014年となるが、グローバルでのモノづくりの変革を推進する同社の強みと日本法人としての取り組みについて、B&R(日本法人)代表取締役の小野雅史氏に話を聞いた。
日本の製造現場は強い――。多くの日本の製造業では、そういう考え方が定着している。それに対し「イノベーションを起こす意欲が少なく、先進技術の採用という意味で乗り遅れているところもある」と指摘するのが、B&R(日本法人)代表取締役の小野雅史氏である。
B&Rグループは産業用オートメーションを展開するオーストリアの企業である。2017年にはB&RグループがスイスのABBに買収されたことにより、ABBがもともと持つロボット技術やプロセスオートメーション(PA)とB&Rが持つファクトリーオートメーション(FA)などを中心としたPLCや産業用PC、ソフトウェアなどの強みを組み合わせた提案を進めている。B&Rの日本法人設立は2014年となるが、グローバルでのモノづくりの変革を推進する同社の強みと日本法人としての取り組みについて、小野氏に話を聞いた。
MONOist 日本でのここまで取り組みについて教えてください。
小野氏 B&Rの日本法人としての登記は2014年3月となる。従来の日本の製造現場向け機器市場は外資系企業にとっては厳しい市場だったが、欧州でインダストリー4.0が注目され、IoT(モノのインターネット)などITの要素が製造現場でも用いられるようになったことで市場のトレンドは大きく変わった。外の情報を欲しがるタイミングで日本法人としてスタートを切れたため、抵抗なく入れたと感じている。開始当初はブランド認知にフォーカスし、展示会への出展や多くの機械メーカーを訪問し、技術の紹介などを進めてきた。ABBグループに入ったことによる企業としての体制整備などで苦労もしたが、それらもようやく落ち着いてきた。
MONOist ABBとの連携について日本ではどういう状況ですか。
小野氏 ABBとB&Rの技術を融合したソリューション開発を本社で進めており、日本として共同でさまざまな取り組みに着手できるのは、こうした技術が世に出た後になる。ABBとB&Rはそれぞれポートフォリオを補完し合う関係にあり、モノづくりの現場を変える新たなソリューションが生み出せると考えている。
MONOist 日本で現在どういう業界、どういう製品に力を入れていますか。
小野氏 グローバルでの強みを発揮できる業界では評価を受けている。特に包装機器業界、射出成形機などのプラスチック業界などでは、導入実績もあり顧客数は順調に増えている。これらの機械はグローバルで出荷されており、海外でも通用する新たな技術の採用に積極的だ。
B&Rとしての強みがグローバル標準をベースにしつつカスタマイズしやすい標準的機器を用意しているという点だ。建設機械や農業機械などに導入が進んでいるモバイルオートメーションコントローラーなどは、グローバルでの安全規格に適合した製品を用意していることで、採用が進んでいる。
オートメーションコントローラー系ではOPC UAを全面的に押し出した取り組みを進めている。OPC UAはドイツのインダストリー4.0の推奨通信プロトコルとして注目されている規格で、さまざまな通信プロトコルと連携して情報を活用できるという利点がある。スマート工場化などの流れの中で、I/Oレベルからクラウドレベルまで、さまざまな機器やシステムと接続する必要がある中で、OPC UAによる通信プロトコル間の連携は使わない手はないものだと考えている。TSN(Time-Sensitive Networking)対応なども進み、グローバルでデファクトスタンダードになりつつある規格であり、これを切り口に国内での提案を進めている。
また、B&Rの特徴を出すことができる新たな差別化製品として現在力を入れて提案を進めているのがリニア搬送システムである。
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