3社の役割としては、富士通が「COLMINA」開発などで得た知見を生かしたアプリケーションレイヤーを担当する。NTT Comは安全なデータ利活用を実現するためのICT基盤やセキュリティ機能を担当する。ファナックは工作機械業界側に立ち、ファーストユーザーとしての立場で参画し、工作機械に必要な機能の企画などを行う。
ファナック 取締役副社長 執行役員 兼 CISOの齊藤裕氏は「ファナックは基本的には製品を売るプロダクトビジネスで成長してきた企業だが、多くの産業でサービスビジネス化が広がる中で、こうした流れに対応する必要が出てきた。しかし、ファナック1社ではこうした動きは難しい。そこで『デジタルユーティリティクラウド』を通じてファナック自身のDXを進め、その知見をさらに工作機械メーカーに展開するという流れを作ることを考えた」と語っている。
ファナックが最初のステップとして活用を検討しているのは、eコマース事業に当たるストアの部分と、シェアードサービス事業に当たるデータ共有の部分だという。
当面の参加企業は工作機械メーカーを想定しているという。「工作機械メーカーがデジタルビジネスの展開を進めるのをサポートするために使う基盤」という位置付けである。その中でまず2021年4月に日本国内で基本サービスを開始し「3年以内に参加企業数300社を目指す。また、参加企業同士のつながりを活性化していく」と田中氏は述べる。工作機械業界である程度の成果を生み出せた段階でその他の業界にも進出する。また、2021年度から順次、欧州、北米、アジアに展開予定だとしている。
富士通やNTT Comでは、以前からも製造業向けのDX関連のシステム提案などを行ってきたが、それらとDUCNETとの違いについては「従来は個社ごとにシステムインテグレーションとして提供してきた。それは各顧客の強みを生かすという発想によるものだったが、DUCNETはこの発想を思い切って転換し、各顧客で共通の機能を『協調領域』と位置付けてしまい、共有基盤として展開してはどうかというものだ。『協調領域』については、投資を抑えて共通のモノを使い、固有の発展につながるものに投資を回すという考えである。それぞれを各企業の状況によって組み合わせて提案していく」と田中氏は位置付けの違いについて語る。
そのため、価格も抑えた形になるという。「具体的な価格は現在検討中の段階だが、例えば、10人程度でデータ共有をする場合、機械設備がそれほど多くなければ、月で数万円レベルという価格感で提供する。大手はもちろんだが中堅中小などの規模でも幅広く使えるようにする」(田中氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.