一方、ユーザー側でAI導入が進まない要因としては「グランドデザインの設計欠如とベンダーに情報を開示しないという2つのポイントがある」と本村氏は訴える。
AIは導入が目的ではなく、AIという道具を使って「何を」「どう」実現するかということが重要なこととなる。「実際に何をするとその現場の経営効果が高まるのか、AIがそれに使えるのかというグランドデザインを描くことが必要だ。シンプルに今の課題を明示し、ベンダーと協力して進めなければ効果的なAI活用はできない」と本村氏は語る。さらに「AIのアルゴリズムの中身や手法の理解よりも、グランドデザインを描き、ユーザー自身の課題や思いを訴え、共通のゴール設定をすることが重要だ。技術の中身はAIベンダーに任せ『やりたいこと』を明確化するということだ」(本村氏)。
その際には、ユーザーとAIベンダーのチームワークが大切になるが、そこで「ベンダーに情報を開示しない」というハードルが生まれる。工場データにはノウハウが詰まっていることからデータや業務の中身は教えられないということが大きな理由となる場合が多い。しかし、ユーザーが重要だと考えているデータ・変数の取り扱わないことには分析結果に大きな影響を与える。さらに、業務プロセスの変更を考慮したAIモデルの開発に対しても障壁となる。
本村氏は「AIベンダーは、データを分析することが目的ではない。分析することで運用効果の見込みや、効果的な運用方法を探っているので、積極的に細かく聞いてくるベンダーの方が本当は質の良いベンダーだと捉えていい」と述べた。また、重要なデータは、データが実際に使えるかどうかの見極めや、AIを再学習させる仕組みや、バージョン管理、アップデートするための監視など運用後のサポートにも必要となる。ただ、ベンターの選定時には開示を避けるなど「データを教えるタイミングは考慮すべきだ」(本村氏)としている。
こうした根本要因を解決した上で、本村氏は、製造業がAIを活用し業務プロセスを効率化したり、属人化している業務をデジタルに置きかえて継承の問題を軽減したりするなどの経営革新を実現するためのポイントとして以下の5つのポイントを挙げる。
本村氏は「AIなど各種ツール導入は、最終的には経営価値につながる革新が目的となる。そこを明確化し、さらに導入についてはアジリティ(俊敏性)が重要となる。成功している企業の言葉として参考にしているのが『導入してからでないと経営効果が分からないのでAI導入は50点でいいので最短でアジリティに』という言葉だ。入れた後の改善サイクルを素早く回すことで効果を高めていくということが重要だ」と語っている。
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