東京大学 教授の染谷隆夫氏の研究チームと大日本印刷が、薄型で伸縮自在なフルカラーの「スキンディスプレイ」と駆動・通信回路と電源を一体化した表示デバイスの製造に成功したと発表。皮膚上に貼り付け可能で、無線通信で外部から送られた画像メッセージを表示でき、新たなタイプのコミュニケーションシステムになる可能性があるという。
東京大学大学院 工学系研究科長で教授の染谷隆夫氏の研究チームと大日本印刷(以下、DNP)は2020年7月13日、オンラインで会見を開き、薄型で伸縮自在なフルカラーの「スキンディスプレイ」と駆動・通信回路と電源を一体化した表示デバイスの製造に成功したと発表した。この表示デバイスを搭載した装置は、皮膚上に貼り付け可能で、無線通信で外部から送られた画像メッセージを表示でき、新たなタイプのコミュニケーションツールになる可能性があるという。現在、大日本印刷が実証実験を進めており「2〜3年後よりも近い未来」(DNP 研究開発センター 部長の前田博己氏)での実用化を目指している。
今回開発したフルカラーのスキンディスプレイは、伸縮性素材であるシリコーンゴムシート上に、12×12個(画素数で144)の1.5mm角サイズのフルカラーLEDが2.5mm間隔で埋め込まれている。表示サイズは平常時で27mm角、全体の厚みは2mmで、130%までの伸縮を繰り返しても電気的、機械的特性は損なわれない。表示部の駆動電圧は3.7Vで、表示スピードは60Hz、最大消費電力は平均100mW。フルカラーLEDによって9000色以上の色表現が可能になっている。
ディスプレイ表示を行う駆動回路、Bluetooth Low Energyで外部と無線通信する通信回路、電源となるバッテリーは1個のモジュールになっており、ディスプレイ表示部の外周近傍に組み込める。フルカラー表示を行うための駆動回路を大幅に簡略化することで、モジュールの小型化に成功した。染谷氏は「市販部品で構成しているこれらの回路をカスタムチップ化すればさらなる小型化が可能になるだろう」と語る。
会見では、前田氏が、試作したフルカラースキンディスプレイを医療用の粘着性素材を使って手の甲に貼り付けた状態で、スマートフォンから送信した画像を表示するデモンストレーションを行った。「駆動・通信回路はかなり小さく、モジュールの容積のほとんどを電池が占めている。今回のデモシステムの場合は、ディスプレイ表示を約30分間続けられる」(前田氏)という。
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