世界で最も愚直な会社、アマゾンの脅威サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(10)(2/4 ページ)

» 2020年06月23日 11時00分 公開

アマゾン=AWSでもうけている会社

 アマゾンは、実はECでもうけている会社ではありません。企業向けのクラウドインフラサービスであるAWS(Amazon Web Services)で利益を確保しているのです。アマゾンの売上高に占めるAWSの割合はわずか12%ですが、営業利益ベースで見ると、その割合は63%にも上ります。

アマゾンの事業別業績構成(2019年) アマゾンの事業別業績構成(2019年)(クリックで拡大) 出典:アマゾンの会社発表資料より筆者作成

 クラウドインフラサービスの業界におけるアマゾンの存在感は抜群です。Synergy Research Groupによれば、2020年第1四半期のアマゾンのシェアは32%とトップで、第2位のマイクロソフトと第3位のグーグルの合計よりも大きいのです。グローバルシェアでは、EC事業者としてのプレゼンスを超えているといっても過言ではありません。

2020年第1四半期のクラウドインフラサービス市場規模とシェア 2020年第1四半期のクラウドインフラサービス市場規模とシェア(クリックで拡大) 出典:Synergy Research Group

 では、AWSはなぜこれほどの高収益とシェアを獲得できているのでしょうか。それはコスト競争力が段違いに高いからです。

 競合他社はクラウドインフラサービスを提供するためにサーバシステムを構築しています。ゆえに、その設備投資に準じた利用料を請求する必要があります。対して、AWSは自社のEC事業のために構築された巨大なサーバシステムの「空きスペース」を他社に開放しているに過ぎません。EC事業で設備投資費用をある程度回収できているのだとすれば、クラウドインフラサービス事業のコスト構造が他社とは根本から異なるといえます。実際、AWSは過去10年間で70回以上の値下げを敢行し、そのたびにシェアを拡大してきましたが、収益性は高水準で維持されています。

 AWSは、単に安いだけではありません。仮想サーバ(EC2)、ストレージ(S3)、リレーショナルデータベース(RDS)、データウェアハウス(Redshift)といったITインフラの構築に必要な機能がそろっており、顧客の要望に広く応えられることも特徴といえます。2017年には、1400回を超えるバージョンアップを実施するなど、機能の先進性を維持・強化するための取り組みにも積極的です。結果として、「AWSであれば、常に最新の機能を利用できる」との評価を得るに至っています。

 セキュリティ対策も盤石です。ISO 27001、SOC、PCI DSSといった認証を取得するだけではなく、DDoS保護サービス(Shield)や仮想プライベートクラウド(VPC)の提供も行っています。セキュリティ対策コストが年々増加していることもあり、「情報漏えいを防ぐために、自社サーバからAWSにデータを移管した企業」も少なからず存在します。三菱UFJフィナンシャルグループは、メガバンクとして初めてクラウドを本格活用するに当たりAWSを採用しましたが、セキュリティの堅牢性を十分に検討した上での判断であったことは間違いないでしょう。

AWSのセキュリティ保証プログラム AWSのセキュリティ保証プログラム(クリックで拡大) 出典:アマゾン ウェブ サービス ジャパン

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