溶接検査の人員を半減できる、パナソニックが自動外観検査システムを発売検査自動化(2/2 ページ)

» 2020年05月22日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
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AIエンジンはパナソニックの豊富な溶接実績で学習済み

 AI検査では、欠陥の種類や位置を判定し、良品比較検査では事前に設定した良品データとの形状比較に基づく一致率で良否を判定する。伊藤氏は「AIを用いた外観検査システムで最大の課題になっているのが、AIの学習に掛かる手間だろう。Bead Eyeではパナソニックでこれまで蓄積した豊富な溶接実績をあらかじめ学習させたAIエンジンを標準搭載している。またAIはアップデート可能なところも魅力だが、Bead Eyeでも当社で常にAIエンジンの精度を高めていき、それを適宜提供していくことを考えている」と説明する。

 スパッタ痕などの微小な欠陥の検出を得意とするAI検査に加えて、リンクウィズが自動検査用ソフトウェア「L-QUALIFY」などで実績を積み上げてきた3次元データ解析技術による良品比較検査により溶接ビードの形状などに関する欠陥を検出できる。なお、検査判定にかかる時間は、検査精度などの設定にもよるが1カ所につきコンマ数秒〜数秒のレンジだという。

検査可能な欠陥も幅広い 「AI検査」と「良品比較検査」の組み合わせにより検査可能な欠陥も幅広い(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 そして、検査判定結果とスキャンで得た画像データを併せて産業用PCなどに保存できるので、これらを溶接品質のトレーサビリティーなどに活用できる。例えば、溶接欠陥の多い箇所をデータから分析できるので、溶接条件を適切に見直して溶接作業などの前工程にフィードバックし、生産性と品質の向上を図れるというわけだ。

「Bead Eye」による検査の流れ 「Bead Eye」による検査の流れ。検査結果をモニター表示するとともにCSVファイルで保存する。これらを分析することで、溶接作業を改善することも可能だ(クリックで拡大) 出典:パナソニック

溶接検査の二重チェックが1人で行える

 伊藤氏は、Bead Eyeの導入効果について「現在の溶接ラインの検査工程は、2人の作業員で二重チェックを行うのが一般的だ。ここにBead Eyeを導入すれば検査工程を1人で担当できるようになる」と強調する。つまり、溶接検査に必要な人員を半減させられるというわけだ。なお、検査の仕様によってはBead Eyeによる無人化も可能だが、スキャナーによる画像データの撮影を行えないような箇所の検査を含めて作業員を必要とする場面はまだ多いという。

「Bead Eye」のシステム構成 「Bead Eye」のシステム構成(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 リンクウィズとの提携を発表したのは2019年6月であり、そこから今回のBead Eyeの発表まで1年しかたっていない。新しい装置の開発期間としてはかなり短いが「パナソニック、リンクウィズの両社で開発に全力挙げてきた成果だと考えている」(伊藤氏)という。

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