自動化された全数検査の“普及”へ――。ハードウェアベンチャーのXTIA(クティア、旧社名:光コム)は、ニコンやJUKI、双日、INCJから総額17億円を調達し、「光コム技術」の事業拡大に乗り出す。出資の内訳は、ニコンが8億円、INCJが6億円、JUKIが2億円、双日が1億円となる。
自動化された全数検査の“普及”へ――。ハードウェアベンチャーのXTIA(クティア、旧社名:光コム)は、ニコンやJUKI、双日、INCJから総額17億円を調達し、「光コム技術」の事業拡大に乗り出す。出資の内訳は、ニコンが8億円、INCJが6億円、JUKIが2億円、双日が1億円となる。
クティアは4社と資本業務提携を結ぶことで、光コム技術を使った計測ユニットの量産や、外観検査装置としての展開、光コム技術を使った検査受託ビジネスを開始する。また、ドイツや米国など自動車大手が多い地域への進出も目指す。
光コムはクシ(comb、コーム)のように並んだ異なる波長のレーザー光による計測技術だ。三角測量方式の従来のレーザー3次元計測とは異なり、レーザーの入射光と反射光が同軸でも測定できるため、エンジン部品などの複雑な形状も高精度に把握する。また、シリンダーヘッドを例にすると、接触式測定では1つのワークに30分以上かかっていたが、光コム技術では1分以内に測定できる。こうした測定精度の高さや測定時間の短さという特徴によって、外観検査の全数かつ自動化を実現できるとクティアは自信を見せる。
これまでクティアは、複数の日系自動車メーカーから協力を受けながら、量産ラインでの外観検査で導入実績を重ねてきた。エンジンの加工工程の一部に光コム技術による計測を取り入れ、測定結果を基に最終加工でのばらつきを補正する取り組みだ。精度を高めることで燃費を改善するだけでなく、複雑な機構のエンジンでサブミクロン単位の品質を保証する場面でも貢献しているという。
クティアは2002年に設立された東京工業大学発のベンチャー企業だ。2008年に光コムの原理を計測機に応用し、2011年に形状測定機の初期モデルを制作。2016年に生産ラインでの全数検査に対応した非接触式3次元形状測定器を開発した。ただ、「当時は、技術的に強みがあることは確信していたが、どう使うのがいいかはつかめていなかった」(クティア 代表取締役社長の八木貴郎氏)という状況だったこともあり、事業としてはなかなか立ち上がらなかった。
その後、展示会などを通じて接点が生まれた日系自動車メーカーの意見を取り入れることで活用法にめどが立ち、売り上げが安定し始めた。とはいえ、計測ユニットなどの現状の生産体制は小規模なもので、海外からのニーズに応えるには人員規模も不足していた。
今回の資本業務提携では、まず、JUKIがクティア製品の受託生産や、光コム技術とカメラを併用した外観検査装置(ハイブリッド検査装置)の開発で協力する。ハイブリッド検査装置は、プロト機の開発が完了しており、1年以内をめどに製品化する。
JUKIはこれまで、画像処理技術によって傷などの表面の異常を検出する外観検査機を展開してきた。画像処理技術では、表面異常の位置や大きさは判定できるが、傷の深さなど高さの測定は難しかった。JUKIは、高精度な高さ測定が可能な光コム技術を外観検査装置に取り入れることで、シミや傷、バリ、異物などに広く対応した高速かつ高精度な検査を実現する。「大きい傷でも浅ければOK、小さい傷でも深いものはNG」といった複雑な検査もカバーできるようになる。
また、JUKIは表面実装機の開発、製造やプリント基板の生産などを手掛けるJUKI産機テクノロジー(秋田県横手市)において、光コムレーザーの信号処理ユニットや分波器、スキャナーユニット、干渉計ユニットを受託生産する。クティアはJUKIの大量生産のノウハウを利用し、自社製品の品質向上やコストダウンを図る。クティアは2020年内にJUKI産機テクノロジーに生産を移管する。
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