パナソニックは、ブルーヨンダーとの提携強化で何を目指しているのだろうか。パナソニック CNS社 上席副社長 事業戦略担当 経営企画担当の原田秀昭氏は、「地上」「低空」「上空」という3つの階層から成る、現場プロセスイノベーションを取り巻く模式図を使って説明した。原田氏は「パナソニックは、現場の機器からデータを取り出し制御する『地上』で強みがある。一方で、地上から得たデータと、工場や物流、小売といったサプライチェーンの各領域をエンドツーエンドでつなげるソフトウェアが活躍する『低空』ではブルーヨンダーに強みがある。さらにブルーヨンダーは、『上空』に当たるパブリッククラウドなどを活用するAI・機械学習技術にも注力している。これらが一体になることで、現場プロセスイノベーションは劇的に進化する」と強調する。
この構図の中でCNS社が目指すのはリカーリングビジネスへの移行だ。「サブスクリプション、リカーリング、コンサルテーション、ソフトウェアビジネスのケイパビリティといったパナソニックにないものをブルーヨンダーとの提携強化で学び、組織能力を強化していく」(原田氏)。また、顧客に対しては、現場プロセスイノベーションが進化した姿の1つであるオートノマスサプライチェーンによって、サプライチェーン改革に貢献していくという。
今回の提携強化により、パナソニックはブルーヨンダーの商品販売にさらに深く関わることになる。これまでは、2019年4月に発表した合弁会社によって、両社で開発した4種類のソリューションを国内企業に提案するレベルでとどまっていたが、今後はCNS社傘下のパナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)がブルーヨンダーのSCMソリューション「Luminate」を国内で販売していく。また、現場プロセスイノベーションにつながる新たなソリューションの共同開発も進める。「これらの共同開発ソリューションは国内だけでなく海外でも展開していくことになるだろう」(原田氏)。
パナソニックと同じ電機メーカーである日立製作所や東芝も、現場の強みを生かしつつIoTなどを活用したソリューション事業を強化している。日立は「Lumada」、東芝は「SPINEX」というブランド名だ。
今回のパナソニックとブルーヨンダーの提携強化は、これら競合企業のソリューションとどのような違いがあるのだろうか。原田氏は「それらの企業は『地上』から『上空』までを含めて、さらにサプライチェーンにとどまらずより幅広い領域をカバーする姿勢を見せている。一方、パナソニックとブルーヨンダーの取り組みはサプライチェーンに特化している点が大きく異なる。サプライチェーンのソフトウェアで35年の歴史を持つブルーヨンダーと、サプライチェーンの現場プロセスイノベーションに集中するパナソニックにより、サプライチェーンに深く入り込んだ形で展開していく」と述べている。
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