パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社 社長の樋口泰行氏が足元の事業状況や中期的な取り組みについて説明。CNS社が主導する「現場プロセス」事業は、日立や東芝、NEC、富士通などが競合になるイメージがあるが「競合ではなくパートナーになる」という。
パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社は2019年12月9日、東京都内で会見を開き、パナソニック 専務執行役員でCNS社 社長の樋口泰行氏が足元の事業状況や中期的な取り組みについて説明した。
パナソニックが進めている2019〜2021年度の中期戦略では、高収益で将来有望な「基幹事業」として「空間ソリューション」「現場プロセス」「インダストリアルソリューション」の3つを定めている。これらのうち「現場プロセス」を主導しているのがCNS社だ。CNS社は、「空間ソリューション」と「インダストリアルソリューション」についても一定の関わりを持っており、パナソニック 社長の津賀一宏氏が中期戦略の目標に据える「低収益体質からの脱却」※)で重要な役割を果たすことが期待されている。
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2017年4月に発足したCNS社は、パナソニック全体に先駆けてカンパニー内の改革を推進してきた。樋口氏は「25年ぶりにパナソニックに戻る際に、CNS社をB2Bカンパニーとして正しい方向に向かわせるために利益率の健全化が必要だと考えた。その全ての土台となるカルチャー&マインド改革の徹底実行だった。“大企業病”から脱してダイナミックな組織づくりを行うには、かなりのビハインドからのスタートだったが、2017〜2018年度の2年間で重点的にやってきた」と語る。
特に、利益率の健全化では、CNS社全事業部で調整後営業利益率が5%以上を達成できるようにさまざまな施策を進めた。アカウンタビリティを明確にして「立地の良い」(樋口氏)製品や地域、顧客セグメントに注力し、徹底的に収益にこだわり、固定費やヘッドカウントのコントロールを強化した。また、内向き仕事も徹底的に排除した。「顧客に対して内向き仕事の分のコストを上乗せすることは、松下幸之助の哲学に反する」(樋口氏)。
CNS社の2019年度業績見通しは、中国での投資需要低迷やエアラインの投資抑制などが影響し、売上高が前年度比177億円減の1兆1100億円、調整後営業利益が同50億円減の840億円となっている。厳しい数字が並ぶものの、通年で全事業部の調整後営業利益率5%以上は確保できる見込みだ。
また、カルチャー&マインド改革で重要な役割を果たした、2017年10月のCNS社本社の東京移転は「同年4月2日の入社時に決めた」(樋口氏)ことだったという。
CNS社は、2019〜2021年度の中期戦略で注力するのは先述した「現場プロセス」になるが、大まかに「ファインプロセス」と「サプライチェーン」の2つに分かれる。「ファインプロセス」は、世界トップシェアの表面実装機を中核に、半導体後工程プロセスなど精緻・精密な加工領域に広げていく事業である。一方の「サプライチェーン」は、ファインプロセスにとどまらないモノをつくるに加えて、モノを運ぶ、モノを売るというプロセスの革新に貢献していく事業だ。
現場業務の複雑化し、労働力不足による賃金上昇、最新技術であるAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の普及などにより、現場プロセスを変革したいという需要は高まっている。樋口氏は「その需要に対してパナソニックの強みになるのが、モノづくり100年のノウハウだ。『現場改善』となるとエキサイトする企業カルチャーが大いに生きる。そして、現場プロセスの変革には必ずアナログ的なすり合わせが必要になる。改善を積み重ねていければ、顧客からのコスト圧力もそれほど大きなものにはならない。そこに戦略的意義がある」と強調する。
特に樋口氏が重視しているのが、現場改善による“アナログ的なすり合わせ”だ。「中韓台と戦わない、米中のテックジャイアントと戦わないための戦略だ。フルデジタルの世界では、頭のいい人が生み出した技術で一発でディスラプトされる可能性がある。また製品を開発して販売する、従来通りのモノ売りだとすぐにコモディティ化する。日本企業が生き残る道は、アナログ的なプロセスにこそある」(同氏)。
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