30年前に予見した「有人化工場」、機械データサービス定着を目指すシチズンの挑戦製造業×IoT キーマンインタビュー(3/4 ページ)

» 2020年03月05日 12時00分 公開
[三島一孝MONOist]

「人」「機械」「技術」を生かすデータ活用

MONOist 具体的にはどういう価値を提供しているのでしょうか。

柳平氏 データ活用ソリューションの前提として、あくまでも中心は「人」「機械」「技術」であるという考えがある。これらの「人」や「機械」の情報をIoTなどを活用して収集して蓄積し、これらのデータ分析にシチズンマシナリーのノウハウを加え、さらに顧客企業の技術やノウハウと突き合わせながら、課題解決や価値創出を進めていく。そういうサイクルを描いている。

photo シチズンマシナリーが考えるデータ活用のサイクル(クリックで拡大)出典:シチズンマシナリー

 重要なのは、機械を使いこなす技術を組み合わせて製造現場の具体的な価値としてソリューションを提供できる点である。LFV(低周波振動切削)技術や摩擦接合技術など独自の金属加工技術なども保有している。データを単純に扱うだけではなく、具体的な製造現場での課題解決まで行える点が特徴だと考えている。

 中小製造業では「工場の実態を知りたいがどうしたらいいのか分からない」という声も多い。さらにデータを分析する機能を持つ中小製造業は一部だ。こうした状況を支援するために、データ分析のレポートまでは半自動で作成できるようにし、簡単な改善の方向性までを示すことができる。データ収集に苦労するケースもあるのでデータ収集キット「アルカートステーション」も用意している。「アルカートステーション」を機械に接続するだけで簡単にデータ収集を行える。システム構築なしに簡単に分析を行える仕組みとして提供している。また、集めたデータをシチズンマシナリーの中でさらに深く分析する「データマイニングプラン」なども用意している。

 例えば、機械の稼働状況を把握できていない中で、機械の稼働率を1%上げるだけで利益が2%上がったようなケースもある。データの見える化を行う中で、さまざまな効果を生み出すことができる。

機械のノウハウを強みに

MONOist データの収集、見える化サービスはさまざまなものがありますが、その中でシチズンマシナリーの強みについてどう考えますか。

柳平氏 機械の使用についてのノウハウやモノづくりのノウハウを加えて提供できるということが最大の強みだ。データは基本的には「過去の結果」である。そこからどうするのかという知見や将来の改善の方向性などが導き出せなければ価値を生むことはできない。それには具体的な機械のノウハウが必要になる。

 特にシチズンマシナリーは工作機械の中でも旋盤など自動盤を中心としており、範囲が狭い一方で知見は深い。マシニングセンタのような汎用機では、顧客企業が機械メーカーに頼らずに使い方のノウハウを積み上げるケースが多いが、自動盤は「自動でできる」ということが売りなので、機械が想定した動きではないとすぐに機械メーカー側に問い合わせがくる。結果としてメーカー側にも顧客の使い方が把握でき、ノウハウもたまりやすい。そうした生きた知見を生かせるということが強みになっている。こうした知見を組み合わせて提供できるからこそ、シチズンマシナリーとしてデジタルサービスを提供する意味がある。

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