試乗コースは浜松ガーデンパーク周辺の交通量の少ない道路だ。ここでドライブモードをSportにしてアクセルを踏み込むと、実に心地よい排気音が聞こえてテンションが上がる。ターボチャージャーで過給される排気量2lの直列4気筒エンジン(写真5)は、225kW(306PS)もの最高出力を持ち、450Nmの強烈なトルクを1750rpmから発生させる。時速0〜100kmはたった4.5秒で達するパフォーマンスも備える(試してはいないので誤解なきよう……笑)。
エンジンの回転上昇もリニアそのもので、ターボラグなどという言葉はすでに死語だし(私のセカンドカーTWINGO GTには若干残っているが)、タコメーターの針は時計回りで一気にレッドゾーンへ向かう。快感そのものでエンジン屋のBMWならではだが、やはり直列6気筒エンジンを載せられないFFレイアウトは残念だ。F20-M140iは小さなボディーに最大出力250kW(340ps)/5500rpm、最大トルク500Nm/1520〜4500rpmを発揮するB58型直列6気筒エンジンが搭載されている。このエンジンはトヨタ自動車の新型「スープラ」のトップグレードRZと全く同じエンジンだ。F40-M135iには絶対に持ちえないオーラがある。
普通に走っている時にはFF(AWD)のハンドリングへの影響は全くと言っていいほど感じない。試乗コースに幾つか小さなコーナーがあったので立ち上がりに少し多めにスロットルを空けてみると、前輪への駆動配分による影響がステアリングホイールに伝わる。数十年前のFF車と比べれば違和感は小さいのだろうが、後輪駆動崇拝者にはどうしても気になってしまう。
操舵(そうだ)の機能を前輪に、駆動の機能を後輪にきっちりと分ける後輪駆動に対し、筆者は100万円のエクストラコストを許容する。F30-320d購入時にはマツダ「アテンザ」(現在の車名はMAZDA6)と比較したが、やはりFF車は選択しなかった。
価格面で分析してみよう。実はここにも私は大きな不満を持っている。
販売台数の大多数を占めるであろう118iで、人気グレードのM-Sportの税込み価格は418万円だ。384万円のF20 118i M-Sportと比較すると、エンジンは排気量1.5lの3気筒ターボでイーブン、さらにF40はFFになったにもかかわらず、30万円近くも価格が上がるのは理解ができない。FF化はコスト競争力向上のための手段ではないのか?
F40-M135iの価格は630万円、先代モデルであるF20-M140iは充実装備のEDITION SHADOWが632万円とほぼ同価格だがこれも解せない。シリンダーが2つ減り、前輪駆動になったら100万円値段が下がっても不思議ではないと思うのだが。先んじて新型になった3シリーズは、インテリアの質感が格段に上がり、さまざまな安全装置も増えたのにもかかわらず価格据え置きだった。ここにも不整合を感じるのは私だけだろうか?
下表はライバルになりそうな各社のスポーティグレードとの価格比較だ。
メーカー | 車名 | エンジン形式 | 税込み車両価格 |
---|---|---|---|
BMW | 118i M-Sport | 1.5l 3気筒 | 413万円 |
メルセデスベンツ | A180 AMG LINE | 1.3l 4気筒 | 402万円 |
アウディ | A3 Sportback30 TFSI Sport S tronic | 1.4l 4気筒 | 342万円 |
フォルクスワーゲン | ゴルフ TSI Highline | 1.4l 4気筒 | 338万円 |
プジョー | 308 GT Line | 1.2l 3気筒 | 315万円 |
ルノー | ルーテシア RSトロフィー | 1.6l 4気筒 | 340万円 |
マツダ | MAZDA 3 20S L Package | 2.0l 4気筒 | 270万円 |
ルノースポールの手が入り、ノーマルグレードより大きなエンジンを搭載したルノー「ルーテシアRSトロフィー」と、前回レポートしたMAZDA3のコストパフォーマンスが際立っている。私ならその2台のうちのどちらかか、非常に出来の良い1.5lのディーゼルエンジンを搭載したプジョー「308GT Line BlueHDi」(344万円)を選択するだろう。この表の車種やグレード以外にもCセグメントのFFモデルには魅力的なクルマが多く存在する。そんな中で後輪駆動と言う唯一無二のアドバンテージを捨て、なおかつ最も高価格帯のF40を選ぶ理由は見つからない。
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