「構造解析」を“設計をより良いものとするための道具”として捉え、実践活用に向けた第一歩を踏み出そう。第1回は、構造解析を理解する上で欠かせない座学(材料力学や有限要素法)の重要性を説くと同時に、構造解析を正しく身に付けるための考え方を解説する。
2008年1月から2011年5月にわたって、材料力学および有限要素法をテーマとした連載をお届けしました。材料力学や有限要素法は、構造解析ツールを使うための“座学”です。そして、それらは構造解析を正しく実行し、結果を正しく評価するための“ライセンス”でもあります。
本連載は、材料力学と有限要素法の座学が分かっていることが前提となっています。始めからこの連載を読んでいただきたいのは山々ですが、材料力学と有限要素法の基本的なことがアヤシイ人は、ぜひ以前の連載から読み進めてください。
特に、
ヤング率って何?
降伏応力って何?
ミーゼス応力って何?
という人は、必読です。
かなりの量ですので、読むのにそれなりの時間はかかってしまいますが、それは構造解析に必要なコトなのです。
重ねて言わせていただきますが、材料力学や有限要素法の基礎知識は、構造解析のためのライセンスです。運転免許を取得せずして、車を運転する人はいないでしょう。それと同じで、座学を修得せずして、構造解析を行ってはいけません。ライセンスを持たずして解析を行うと大きな間違いをしてしまいます。
せっかく学んだ座学を生かす第一歩として、「構造解析」をテーマに連載を進めていきます。以前の連載と重複する部分もあるかと思いますが、それはそれで重要ポイントとして、広い心で読み進めていただけると幸いです。
さて、今日のシミュレーション技術は進歩を遂げ、さまざまな現象を解析できるようになりました。応力場、伝熱場、流体場、電磁場、音場など……。
以前の連載でも触れましたが、筆者は材料力学を再履修するほどダメダメな学生でした。数式を理解することが大の苦手で、教授の言葉からイメージされるイラストで材料力学を何とか理解しました。そして、初めての就職先は、数値解析の専門会社。その会社には技術顧問を務める、とある大学の名誉教授がおりました。当時で既に、祖父くらいのお年だったかと思います。その先生が全盛期に書かれた飛行機の構造設計に関する書籍は、名著中の名著といわれ、現在では10倍以上の取引価格が付けられ、神田の古書店ではガラスケースの中に飾られるほど貴重なものになっています。
以下は、その先生の言葉です。
いろいろな「場」の解析がありますが、構造解析は非常に大切です。構造が成立してこそ、初めてそこに流体が流れ、電磁場が発生し、音が響きます。構造が成立することをはじめに検討すべきです。
筆者はこのお言葉で、まずは構造解析を修得しようと思いました。
構造解析は奥が深いです。今では多くの複雑な現象を解析できるようになりました。複雑さが増せば増すほど、「計算力学」という数値解析特有の知見が必要になります。
本連載では、高度な構造解析まで対象とはしません。あくまでも“構造解析をこれから始める人”を対象としています。そして、構造解析を“設計をより良いものとするための「道具」”として捉え、設計に軸足を置いて解説します。
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