今後の自動車業界は、アフリカ、東南アジアなど、従来の自動車の需要が一定数維持される一方で、自動運転、環境対応車の需要は大きく伸びていくと考えられる。2021年11月からは、国産の新車に自動ブレーキの搭載が義務付けられる。「こういった業界の動きは、採用にも影響を与えると思う」と関寺氏は話す。
例えば、IoTによって機器と人間の距離が近づくにつれて、これまで家電メーカーなどで求められてきたBtoC系の仕事の需要が、自動車産業でも出てくる可能性がある。アプリケーション開発はもちろん、マーケティングやWeb系、事業企画といった分野だ。完成車メーカーだけでなく、サプライヤでもサービスが直接的にお客さまに届く機会が増えるため、同様の可能性があるという。
エンジニアには関係ないように思えるが、実はそうでもない。これまでも技術営業や購買の技術者など、エンジニアが文系の職種に就くことがあったのと同様に、マーケティングや企画などでも、エンジニアとしてのスキルが必要とされるからだ。例えば新たな企画など、一歩先のことを考えるに当たって、技術を理解している人でなければ思いつかないことも多い。自動車に限ったことではないが、実現可能性も含めて考えられるのは、やはりエンジニアだろう。
一方で、業界に詳しいエンジニアは「こうあるべき」、「今までこうやってきた」といった「枠」にとらわれてしまうこともある。自動車の概念そのものが変わろうとしている現在、常識にとらわれない発想も必要だ。「完成車メーカーでも、あえて異業界の人材を採用したいというケースが出てきている。異業界で培った技術が欲しいというだけでなく、業界外の発想が欲しいという意図もある」と関寺氏。
さらに将来をイメージしてみよう。自動運転が発達し、自動車が「ハンドルを握って運転して、移動する」ものから「生活を豊かにする空間」になるのは時間の問題。家のリビングと同じように、インテリアとしてのデザインや、空間としての心地よさが重視されるなら、必要な人材も変化、多様化するのは当然の流れだ。
「自動車業界のヒエラルキーに沿ってステップアップする以外のキャリアの積み方もできるし、業界外の方が自動車やそれを取り巻く業界で活躍できる可能性も広がっている。自動車業界がどういうスキルを求めているかというより、自分のスキルを自動車に生かせるのではないかというくらい、視野を広く持つといいかもしれない」と関寺氏は語った。
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