新規参入が難しいとされてきた自動車業界だが、CASEやMaaSなど新しい概念による変革の波とともにベンチャーも台頭してきている。今回は自動車業界におけるベンチャーへの転職のメリット、デメリットなどについて、転職コンサルタントに話を聞いた。
自動車業界は安全基準が非常に厳しいため、新規参入は障壁が高いとされてきた。しかしCASEやMaaSと言われるように、自動車や輸送手段の概念が大きく変わろうとしていることを背景に、最近は自動車業界にも徐々にベンチャーが立ち上がってきている。今回は自動車業界におけるベンチャーへの転職のメリット、デメリットなどについて、自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャー 関寺庸平氏に聞いた。
自動車業界のベンチャーには、異業種の企業が自動車のビジネスに参入するケースと、ゼロから起業しているケースがある。事業内容で見ると、大きく2つに分類することができる。1つは、自動車業界におけるサービスやアプリケーション、セキュリティなど、ソフトウェアを展開する企業だ。ITやWebサービスなどに強みを持つ企業の異業種参入が多い。
もう一つは、これまで世の中になかったモノを作りだす企業だ。例えばまったく新しい輸送手段として、空を飛ぶクルマ、水に浮くクルマなどは、分かりやすい例だろう。CASEやMaaSを進化させるような部品を開発している企業もあるが、まったく無名の企業が部品を供給することは、安全基準などの観点からなかなか難しい業界でもある。
ベンチャーと大手企業とでは、どのような違いがあるだろう。
最近は大手も随分変化してきたが、ベンチャーは、服装なども含め比較的自由でカジュアルな雰囲気であることが多い。楽しく働けそうな職場ではあるが、業務は大手ほど細分化されておらず、1人で多くの役割を担うことになる可能性が高い。しかし少人数のチームで進めていくため、自分のアイデアや技術が形になるまで見届けやすく、「生み出している」「成し遂げている」という手応えを強く感じられるのはベンチャーのメリットだろう。
一方、今後の情勢が不透明な中で、大手の安定感、安心感は大きなメリットだ。ベンチャーは、給与、福利厚生など、大手ほどの期待はできない。立ち上げ間もない事業が安定しないのは当然だし、ベンチャーのなかには、当面は自ら収益を上げることなく、出資者からの資金のみで運営し、研究開発を集中して行っている場合もある。しかし開発に専念できるほど出資を得られている事業ならば、将来ビジネス化したときや、上場を果たした場合には、大きなロイヤリティを得られる可能性があるという見方もできる。
また大手は技術の基礎的な基盤や環境が整っているが、ベンチャーにはこれまでの蓄積はなく、何でもイチからやっていかなければならない。その代わりに制限や制約が少なく、自由な発想でできるという点はメリットだろう。
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