MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年12月12日、東京都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。前編で東芝 執行役常務 最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)の島田太郎氏による基調講演「東芝のデジタル戦略、CPSテクノロジー企業への道」の内容を紹介する。
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2019年12月12日、東京都内でセミナー「MONOist IoT Forum in 東京」を開催した。同セミナーは通算で12回目、東京での開催は4回目となる。
本稿では前編で東芝 執行役常務 最高デジタル責任者(Chief Digital Officer)の島田太郎氏による基調講演「東芝のデジタル戦略、CPSテクノロジー企業への道」の内容を紹介する。
後編では、オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 企画室 IoTプロジェクト 部長の小澤克敏氏による特別講演「世界で最も“現実的な”IoT活用〜オムロンが実現する現場革新〜」と、日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長の岡実氏によるランチセッション「OPC UAが注目されているのはなぜか?〜その背景と最新動向〜」の内容とその他の講演について紹介する。
東芝グループでは、経営再建後の新たな成長エンジンとして「CPS(サイバーフィジカルシステム)」を掲げている。このCPSを活用した「CPSテクノロジー企業」を目指すとしている。
島田氏は「ここ10〜20年の間、製造業は受難の時代だった。多くの企業が非常に高度で難しいモノを作っていたのに、利益についてはIT産業がはるかに多くの額を生み出すような状況で、価値を奪われてきた時代だったいえる。彼らの成功はサイバー空間での情報をサイバー空間で処理し価値を生む『サイバーtoサイバー』の世界でのものだ。これを私は『データ1.0』の時代と呼んでいる。しかし、サイバー空間とフィジカル空間が密接に連携できる技術が生まれ、これからは『フィジカルtoサイバー』でのデータ活用が求められる『データ2.0』の時代に入る。この中では、日本の製造業にも大きなチャンスが来る」と語っている。
この「データ2.0」の時代において、島田氏が強調するのが、製品などフィジカル空間での強みを生かしつつ、プラットフォームなどを構築してビジネスを拡大するIT産業の強さを取り込んでいくということだ。
「サイバー企業はアプリのダウンロード数などではなく、アクティブユーザー数を重視する。使っているかどうかが大事ということだ。これを製造業で考えると、非常に多くのアクティブユーザーを抱えているということになる。ただ、われわれはこのアクティブユーザーを把握もせず、何のアクションもせずという状況だった。これを有効活用できるようになれば、現在の不公平なまでのIT産業との差を埋めることができる」と島田氏は述べる。
IT産業では、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon.com)などのプラットフォーマーが、時価総額などで大きな価値を生み出している。ドイツのモノづくり革新プロジェクトである「インダストリー4.0」などもこのプラットフォームなどの枠組みを製造業などフィジカルの世界にどう持ち込むかを研究してきたという。
島田氏は「インダストリー4.0は、ドイツがGAFAを研究してサイバー空間でない領域で同じことをどうするかを考え抜いて作り上げた取り組みだ。それを端的に示すのがRAMI 4.0(レファレンスアーキテクチャモデルインダストリー4.0)である。RAMI4.0は、そのままで何かのシステムを実装できるというものではない。全体像を整理するために作られたものだ。何と何が重なっていて、何が足りないのかを示すことができる。なぜ重要なのかというと、従来の情報の流れは階層的で順番に伝わっていくという形だったが、IoTなどにより階層を飛び越えて自由にさまざまな階層が結び付けるようになるからだ。そのためには、階層をどう飛び越えることでどういう価値を生むかを考えられるようにならなければならない。そのためにはこうしたアーキテクチャが必要になるということだ」と語る(※)。
(※)関連記事:インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開
そして、そのカギを握るのが「インダストリー4.0コンポーネント」とそれを実現する「管理シェル」だとする。これは工場などの構成要素を全て「オブジェクト」として認識し、これを「インダストリー4.0 規格」に準拠した通信規格(OPC UA)で対等につなげるというコンセプトである。工作機械や射出成形機、PLCなど工場内で使われるさまざまな機械や機器は、さまざまな通信規格やデータフォーマットで稼働しており、全てのデータを一元的に集めてくるのが難しかった。これを「管理シェル」を挟むことで、異なるプロトコルやフォーマットからでもデータを収集できるようにするというものである。島田氏は「既にドイツでは『管理シェル』のエクスプローラーなども開発されており、あらゆるものを『つなぐ』という取り組みが具体的に進んでいる」と述べている。
では、なぜ「あらゆるものをつなぐ」ということが重要になるのだろうか。
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