特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年01月10日 10時00分 公開

「umatiとはUSBのようなもの」キーマンに聞くumatiの最新仕様と将来像いまさら聞けないumati入門(3)(4/4 ページ)

[高口順一/ベッコフオートメーション,MONOist]
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MTConnectとの関係

筆者 米国の工作機械工業会が推進している「MTConnect」との関係についてはどう考えていますか。

ブルース氏 MTConnectを推進しているAMT(Association for Manufacturing Technology)との話し合いの場は持っているが、まだ先行きが見えていない。umatiとMTConnectが当面は共に使われていくことを考えると、相互変換のための公式なツールが必要となってくるため、可能性も模索しているところだ。

photo 図5 工作機械共通インタフェースの1つであるMTConnectの仕様書(クリックでWebサイトへ)出典: MTConnect Institute

 umatiの策定が進む中で大きな関心事となっているのが、同様の工作機械向け共通インタフェースであるMTConnectの動向である。MTConnectは米国の工作機械工業会であるAMTが2006年から策定を始めた工作機械向けの共通インタフェースで、2017年に始まったumatiよりも先行して進められている規格である(図5)。

 その発足当時に主流であった「HTTP通信によるxmlファイル受け渡し」という形式を基本としていたが、近年ではumatiと同様にOPC UAの採用も進めており両者の取り組みは非常に似てきているというのが実情だ。工作機械ユーザーにとっての利便性を考えると、この2つの国際標準規格の「公式な相互変換ツール」やそもそもの「規格共通化」などの可能性を模索する話し合いが必要なのは明らかで、今後の動向が注目されている。

 また、同様の話としてumatiとIoTプラットフォームとの関係性もしばしば話題に上る。良く聞かれるのは、umatiはIoTプラットフォームの競合となるのではないかという質問だ。例えば、三菱電機などの企業が中心となり進めているIoTプラットフォーム「Edgecross」は、推進しているEdgecrossコンソーシアムがumatiの活動にも参画している。

 もちろんこれからの動向はまだ分からないが、こういったIoTプラットフォームはそのシステム上にumatiへの対応を準備する可能性が高い。これが実現するとIoTプラットフォームからumati対応の工作機械への接続が容易になることだろう。このようにumatiとIoTプラットフォームは競合するものではなく、umatiによりIoTプラットフォームのユーザーの利便性が高まるものだという位置付けとなる。

 ただ一方で、例えばシーメンスが推進するIoTプラットフォーム「Mindsphere」は、現時点ではumatiへの対応を明言していない。IoTプラットフォームも、umatiへの対応を積極的に検討していくところと、自前の接続規格による囲い込みという既存路線を推進していくところとの二極化が始まっているように見える。このあたりのIoTプラットフォーム各社の動向もこれから注目されるところだ。

umatiにより実現される理想

筆者 umatiによって実現される理想の姿というのはどういうものなのでしょうか。

ブルース氏 例えるならば、umatiはUSBのようなものだ。どんなPCにもUSBインタフェースがあるのと同じように「全ての工作機械にumatiインタフェースがあり、全てのシステムにumatiインタフェースがある」という世界を目指したい。その結果、シームレスな接続が意識せずに行えるようになり、さまざまな価値を生み出すことができるようになる。稼働監視のために投資をする必要が無くなり生産性が向上する。さまざまな製造業ユーザーに価値を生み出すことが目指す姿だ。

 umatiが目指すのは工作機械を使うユーザーにとってのメリットであるという。全ての工作機械とシステムが投資を必要とせずに接続できるのは、確かに生産性を向上させたいユーザーにとって大きなメリットとなるだろう(図6)。

photo 図6  umatiが目指す姿(クリックで拡大)(出典: VDW、■https://www.youtube.com/watch?v=0KZwwSLgPf8

 ただその一方で課題も残されている。ユーザーメリットのための規格策定やumati実装のコストを負担しているのが工作機械メーカーやコントローラーメーカーであるという点だ。umatiの規格は、リリースされたら無償で使えることを前提に準備が進められており、国際的な標準規格とはそうあるべきだということは間違いない。しかし、策定に人を出しコストを負担している企業に対しては、直接的なメリットが存在しないのが実情だ。「策定された規格を無償で使うだけの企業」が最も得をするという構造が健全ではないという意見は、内部でも挙がり始めており、解決すべき課題の1つだといえるだろう。


 さて、ここまでumati規格策定の中核を担うブルース氏のインタビューを基に規格の動向をお伝えしてきたが、いかがだっただろうか。

 先に述べたようにumatiのバージョン1.0のリリースは2020年1月に予定されている。リリースされるこのumati仕様をベースとして、VDWは同年9月にドイツのシュトゥットガルトで開催される国際金属加工見本市「AMB2020」にて次のショーケースを検討しているという。umatiが本当に工作機械の共通インタフェースになることができるのか、2020年の動向に注目だ。

≫連載「いまさら聞けないumati入門」の目次


著者紹介:

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高口順一(こうぐち じゅんいち) 
ベッコフオートメーション ソリューション・アプリケーション・エンジニア

 東京大学工学部を卒業後、ものづくりコンサルティングファームに入社。2005年には「金型生産工程の超短納期化の実現」にて第1回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞を受賞。その後、工作機械メーカーを経て、2015年にPC制御に特化したドイツの制御装置メーカーであるベッコフオートメーション株式会社に入社。ソフトウェアPLC/CNCであるTwinCATの技術を担当しその普及に努めている。



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