工場のスマート化などが進む中、工場で使用される工作機械でも通信への対応などに大きな注目が集まっている。ドイツの国際金属加工見本市「EMO Hannover」を主催するドイツ工作機械工業会(VDW)のEMOハノーバー マネージングダイレクターであるクリストフ・ミラー氏に工作機械の最近の傾向について聞いた。
工場のスマート化などが進む中、工場で使用される工作機械でも通信への対応などに大きな注目が集まっている。ドイツの国際金属加工見本市「EMO Hannover」を主催するドイツ工作機械工業会(VDW)のEMOハノーバー マネージングダイレクターであるクリストフ・ミラー(Christoph Miller)氏に工作機械の最近の傾向について聞いた。
MONOist 政治面などで不安定な要素もありますが、工作機械のグローバル市場の動向についてどう見ていますか。
ミラー氏 米中の貿易摩擦など、グローバル市場を見ても政治面の影響は出ている。中国市場などでの保護経済化への影響は、距離が近い日本ほどではないかもしれないが、ドイツでも大きい。
しかし、調査機関のデータなどを見ても工作機械市場そのものは堅調である。自動車などをはじめとした主要分野で引き続き導入が進む他、医療分野など新たに利用が広がる領域などもある。東欧など工場などが新たに建設され、新たに工作機械を多く活用する地域なども生まれてきており、基本的にはそれほど心配していない。
MONOist インダストリー4.0などスマートファクトリー化への取り組みが工作機械でも広がっています。
ミラー氏 工作機械や欧州というカテゴリーに収まらない変化であると捉えている。さまざまな産業で世界中が同じような方向性で進んでいる。デジタル技術とデータを活用し、新たな価値を創出する動きは全ての産業について大きな変化である。その中で通信技術が大きなポイントになっている。「EMO Hannover 2019」では5Gゾーンなども用意する。また、工作機械のインダストリー4.0プラットフォーム※)ともいえる「umati」の専用ブースなども用意する。
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MONOist 「umati」について教えてください。
ミラー氏 「umati」は前回の「EMO Hannover 2017」で発表した工作機械におけるインダストリー4.0プラットフォームである。工作機械の情報を簡単にデータ化して収集するインタフェースとしての役割を果たす。インダストリー4.0の推奨規格とされている通信プロトコル「OPC UA※)」をベースとしており、機械から上位のITシステムへのデータ転送などを簡単に行える。
※)関連記事:なぜ工場ネットワークで「OPC UA」が注目されるのか
Chiron、DMG森精機、Emag、Grob Werke、Heller、Liebherr Verzahntechnik、Trumpf、United Grindingなどの主要工作機械メーカー8社が参加。その他、制御系技術やアプリケーションベンダーとして、Beckhoff Automation、Bosch Rexroth、ファナック、Heidenhain、Siemens、GF Machining Solutions、Pfiffnerなどが参加している。
工作機械を導入する企業には大手企業の工場などもあるが、中小企業や中堅企業なども多い。そういう企業が単独でインダストリー4.0などで求められるITやデータ活用の仕組みを構築するのは難しい。「umati」は基本的には無料で誰でも同じインタフェースが使える。中小企業でもこの新たな枠組みに参加できるというのが特徴だ。
現在、開発プロジェクトが進行しており、EMO Hannover 2019では対応製品が出展される見込みだ。会場では出展企業の機械を最低でも100台以上接続したデモンストレーションを実施したい。
MONOist 同様の規格はさまざまな国や団体が作っていますが、連携への取り組みについてはどう考えていますか。
ミラー氏 工作機械向けの通信規格としては、米国製造技術協会(AMT)が主導する製造業向けオープン通信規格「MTConnect(MT コネクト)」などがあるが、協調する動きはある。ただ、さまざまな比較を進める中でも、現状では効率性や拡張性などの面でインタフェースとしては「umati」の方に優位性があるのではないかと感じている。
MONOist 5Gへの期待についてはどう考えますか。
ミラー氏 5Gは2019年内に開始する地域も多いが、さまざまな技術的な側面があり、どこまで実際に使えるようになるのかはまだ分からない。EMO Hannover 2019でもまずは展示ホールを使って実証を進めるというような考え方だ。
5Gが本当に普及しパフォーマンスを発揮できるとすると、工作機械にも大きな影響がある。特にリアルタイム性を実現できるようになれば、配線などが不要になり、工場のレイアウトなどが変わる可能性もある。ただ、これらはどの時期にどういう普及の形になるのかはまだ分からない。
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