「umatiとはUSBのようなもの」キーマンに聞くumatiの最新仕様と将来像いまさら聞けないumati入門(3)(1/4 ページ)

工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」。「umati」とはどういう規格でどう活用すべきかを紹介してきた本連載だが、第3回は「umati」の規格策定を進める組織の中核を担うアレクサンダー・ブルース氏へのインタビューの内容をお伝えする。

» 2020年01月10日 10時00分 公開

 工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」――。本連載では、umatiとはどういう規格でどのように活用すべきかを紹介している。第1回は「『umati』とは何か?」をテーマに概要を紹介し、第2回はドイツの金属加工技術展「EMO2019」で紹介された特別企画「umati@EMO2019」の動向を解説した。

 第3回となる今回は、umatiの規格策定を進める組織の中核を担うドイツ工作機械工業会(VDW)のアレクサンダー・ブルース(Alexander Broos)氏へのインタビューの内容をお伝えする。同氏へのインタビューを通じて「umati」の現状と将来について紹介する。

umatiを統括するブルース氏へのインタビュー

 そもそも「umati」とは「universal machine tool interface」の頭文字をとったもので「工作機械がネットワークを介してシステムと接続しデータ交換をするための共通のインタフェース規格」のことである。現在、VDWが主体となり、多くの工作機械メーカーや制御装置メーカーが参画してその規格の策定に取り組んでいる。2019年9月にドイツで開催された国際金属加工見本市EMO2019では、メーカーを超えて工作機械110台がumati規格でつながるというショーケースが実現されたことも記憶に新しい(※)

(※)関連記事:EMO2019に見る「umati」最前線、工作機械110台がつながった「umati@EMO2019」企画

 このumati策定の全ての活動の責任者を務めているのがVDWのブルース氏である。umatiのこれまでの取り組みと将来の展望について、幸いなことにブルース氏本人からおよそ2時間に渡りEMO2019で話を聞かせてもらう機会をいただいた。今回はそのインタビューにおけるブルース氏の回答と、その補足解説によりumatiの実像に迫りたい(図1)。

photo 図1 EMO2019でインタビューに応えるブルース氏(クリックで拡大)出典: 筆者撮影

umati仕様のリリースはいつなのか

筆者 umatiの仕様のリリースはいつを予定しているのでしょうか。

ブルース氏 umati仕様のリリースは2020年1月を予定している。バージョン1.0での狙いは、工作機械の稼働監視だ。そのため、情報の流れはシステムが工作機械から読み取る一方通行のものに絞り込んでいる。データ収集の周期は1Hz程度を想定している。

 まずは最も関心を集めているumati仕様のリリース予定とその内容についてを聞いた。そもそもEMO2019においてショーケースを実現した時点ではumatiのリリースにはまだ至っておらず、2019年3月に発表された暫定版のumati仕様が使われていた(図2)。本来はEMO2019の直後にリリースを計画していたと思われるが、EMO2019でのショーケースとして使われた際の課題への対応を行い、2020年1月をリリースのタイミングとして定めているという。

photo 図2 EMO2019におけるショーケースとそこで使われた暫定版umati仕様(クリックでWebサイトへ)出典: VDW

 バージョン1.0でのねらいは工作機械の「稼働監視」である。情報は上位のシステムが工作機械から読み取る一方通行となっており、データ収集周期は1Hz、すなわち1秒に1回程度を想定しているという。

 この定義はバージョン1.0でのumatiの使い方を明確に示しているといえる。データ収集周期から見えてくるのは、CNCが扱う工作機械の制御情報やセンサー情報の生データといったさらなる高速周期で集めなければ意味がないデータは、umatiが取り扱う対象ではないということだ。実際、暫定版のumati仕様を見てみると、そこに含まれているのは工作機械の「基本情報(型式など)」「稼働情報(運転中、停止中など)」「部品情報(加工中の部品名など)」「工具情報(使用中工具、使用時間など)」「アラーム情報」といった、高速なサンプリングは必要の無い情報が並んでいる。

 また、そもそもの話でいえばumatiが対象としているのは、いわゆる工作機械と呼ばれる産業機械だ。具体的には、マシニングセンタ、旋盤、研削盤などの機械加工を行う装置を指す。さらにはレーザー加工機やAM(Additive Manufacturing)と呼ばれる積層造形装置なども対象として含まれているが、鍛圧機械やプレス機などは対象とされていない。これはVDWが対象としている業界かどうかというところで線引きがされていると思われる。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.