特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年01月08日 10時00分 公開

ローカル5Gが新たなバズワードに、製造業はその可能性を生かせるのかMONOist 2020年展望(2/3 ページ)

[朴尚洙,MONOist]

急速に拡大するローカル5G市場、2030年には国内需要額が200倍以上に

 今回のような電波法制の大きな変更について約1年間で一定のめどを付け、実際に各地域の総合通信局での免許申請受付まで開始したことは従来にない柔軟な取り組みといえる。これもローカル5Gの持つ大きな市場性が背景にある。

 JEITA(電子情報技術産業協会)は2019年12月19日、通信キャリアが扱う5G(WAN5G)の市場規模と併せて、ローカル5Gの市場規模も発表している。まずWAN5Gについては、2020年の世界需要額が7.9兆円、国内需要額が0.3兆円だが、10年後の2030年には世界需要額が約20倍の157.5兆円、国内需要額が30倍の9兆円になるという。

WAN5Gとローカル5Gの市場規模 WAN5Gとローカル5Gの市場規模(クリックで拡大) 出典:JEITA

 一方、ローカル5Gについては、2020年の世界需要額が0.1兆円、国内需要額が62億円にとどまるものの、10年後の2030年には世界需要額が約100倍の10.8兆円、国内需要額が200倍以上の1.3兆円と大幅に拡大するとしている。

 WAN5Gの2030年の世界需要額である157.5兆円と比べれば、ローカル5Gの2030年の国内需要額である1.3兆円は極めて小さな額だ。しかし、10年間で世界で100倍、国内で200倍以上に成長する市場であるとともに、WAN5Gとは異なり産業ごとのノウハウが求められることにより国内で培った成果を海外に事業展開できる余地もあるとなると話は変わってくる。ローカル5Gへの取り組み自体にもメリットがある上に、その取り組みの成果が新事業の種になる可能性があるわけで、だからこそ多くの企業がローカル5Gに参入しようとしているのだ。

2019年末からローカル5Gの免許申請受付を開始

 先述した通り、総務省は2019年末からローカル5Gの免許申請受付を開始しているが、現時点で利用できる周波数帯は28.2G〜28.3GHzの100MHz帯のみに限られている。もともとローカル5G候補帯域は、より広域での利用に適したSub-6と呼ばれる帯域のうち4.6G〜4.8GHz、超高速通信が可能とされる28GHz帯では28.2G〜29.1GHzが候補に挙がっていた。

 ただし、4.6G〜4.8GHzについては防衛省の公共業務用通信との調整が、28.3G〜29.1GHzについては衛星通信システムとの調整が必要であり短期間で利用可能にするのは困難だった。そこで、調整が検討済みの28.2G〜28.3GHzに限ることで早期の制度化を図ったというわけだ。

ローカル5Gが使用する周波数と導入スケジュール ローカル5Gが使用する周波数と導入スケジュール(クリックで拡大) 出典:総務省

 また、同帯域の利用についても幾つかの制限がある。通信キャリアが手掛ける5Gサービスは、制御信号に既存のLTEを、データ送信に5Gを用いるNSA(Non Stand Alone)構成でスタートする予定だが、28.2G〜28.3GHzのローカル5GについてもNSA構成が前提になっている。さらに、調整が検討済みとはいえ他通信への影響を最小限に抑えるために、当面は「屋内」または「敷地内」での利用が基本になる。

 なお、28.2G〜28.3GHz以外の帯域については、2020年6月までに技術的条件をとりまとめて、2020年11〜12月の制度化と申請受付を始める予定である。制御信号もデータ送信も5Gを用いるSA(Stand Alone)構成は、このタイミングで利用できるようになる可能性が高い。

 つまり、2019年末から受付を始めたローカル5Gの免許では、極めて限定的なPoC(概念実証)への適用にとどまることになるだろう。それでも、5Gという新たな技術に早期にアクセスできるメリットは大きいと考える企業は多い。

 グローバルの通信機器大手であるエリクソンやノキア、シスコシステムズの他、近年は通信機器ベンダーとしての存在感が希薄だった富士通やNEC、日立国際電気も名乗りを上げている。また、地方自治体の公共インフラ向けに自営無線通信システムを展開するパナソニックなども参入する。

 今回のローカル5Gの免許は、既に全国サービス展開に向けて5Gの通信帯域を割り当てられている通信キャリアは利用できないようになっている。ただし、通信キャリア以外の通信事業者は申請可能であり、ローカル5Gを大きなチャンスと捉えている。既に免許申請を行っているNTT東日本は、東京大学と産学共同で「ローカル5Gオープンラボ」を構築し、オープンに参加企業を募ってさまざまな産業プレーヤーとのローカル5Gを活用したユースケースの共創に取り組むとしている。住友商事とインターネットイニシアティブ(IIJ)、地域ケーブルテレビ事業者5社などは新会社「グレープ・ワン」を設立し、ローカル5G事業を立ち上げていく構えだ。

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