電動車いすを手がけるWHILLは2019年12月26日、2019年に国内外の5カ所の空港で電動車いすの自動運転システムの実証実験を実施したと発表した。
電動車いすを手がけるWHILLは2019年12月26日、2019年に国内外の5カ所の空港で電動車いすの自動運転システムの実証実験を実施したと発表した。
同社は2019年の消費者向けエレクトロニクス技術の展示会「CES2019」でシステムを披露した後、5月にオランダのアムステルダム・スキポール空港、11月に羽田空港および米国ダラス・フォートワース国際空港、12月にアラブ首長国連合のアブダビ国際空港およびカナダのウィニペグ国際空港で実証実験を行った。有人での実証実験では延べ100人以上の空港利用者が実際に乗車した。実証実験では保安場を通過した後のエリアに電動車いすステーションを設置し、空港利用者が乗車して目的の搭乗口まで移動した後、降りるとステーションまで無人で戻るという形をとった。
空港での実証実験を強化した理由には、空港で車いすに関連したコストが増大しているという背景がある。大規模な空港では、年間7000万人の搭乗者のうち1%強が移動や乗降で支援を必要とする。そうした搭乗者は世界の主要な空港で年間10%のペースで増加し、対応のための予算も拡大している。年間数十億円の予算を割り当てる例もある。そのため、車いすによる介助や利用後の車いす回収のコスト増加が課題となっている。また、“旅客の権利”を保護する目的で、欧州では乗客の乗降に必要な支援を事業者が無償で行うよう法令で義務付けている。
空港の利用者からは「簡単に操作できる。旅行はしたいが、長距離を歩くのが大変なのでうれしい」(70代女性)、「普段は車いすを利用していないが、膝が痛いのでありがたい」(70代男性)、「外見では分からない疾患があってゆっくりしか歩けないが、周囲から健康なのに車いすを使っていると思われることに引け目を感じていた。自動運転システムがあれば、解除してくれる人に遠慮しなくてもいいのでまた是非利用したい」(60代女性)といった声が寄せられたという。
WHILLの自動運転システムは、電動車いすの自動走行・自動停止機能と、複数の自動走行対応電動車いすを管理、運用するシステムで構成されている。また、電動車いすがインフラに依存せず現在地の推定を行えるようにすることで、施設側が自動走行対応の電動車いすを導入する際のハードルを下げる。電動車いすの最高速度は時速6km。病院や空港などの施設で、長距離の歩行が困難な高齢者や身体が不自由な人の呼び出しに応じて、電動車いすを自動走行で向かわせることで移動を支援することを目指している。
また、介助者なしに電動車いすで移動できるようにすることで、施設内の回遊を促進し、消費の拡大にもつなげられると見込む。WHILLでは、電動車いすの自動走行化をMaaS(Mobility-as-a-Service、移動手段をサービスとして利用すること)の一部と位置付ける。
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