パナソニックは2019年11月25日、顔認証技術のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を提供すると発表した。
パナソニックは2019年11月25日、顔認証技術のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を提供すると発表した。同社の顔認証技術をクラウドに展開し、顧客に初期費用不要かつ従量課金制で提供する。作業工程管理や入退管理、顔IDによるマーケティング、キャッシュレス決済など幅広い応用の創出を目指す。
生体認証の需要が高まっている。顔認証関連システム市場も順調な成長が見込まれており、グローバル市場では2020年に6600億円規模に達するとの予測もある。パナソニックは1992年から顔認証技術の研究を始めており、民生機器やセキュリティ機器など多くの同社製品で顔認証機能の活用が進む。
長年培ってきた顔認証技術をB2B市場に展開する取り組みも加速させている。全国主要空港で稼働する顔認証ゲートの納入は200台を超え、2019年7月からは日本人の入出国手続きに加えて外国人の出国手続きに対応させた。また、同社オフィスで顔認証システムを導入し、同社コネクティッドソリューションズ社の約7800人で運用するなど実績を重ねている。
同社の顔認証技術は、長年の開発で積み重ねた逆光補正やノイズ除去などの「現場最適化技術」と、最先端のディープラーニング(DL)を用いた「DL高精度化技術」が強み。帽子やマスクを着用した人物も認証を行うことが可能だ。
DL高精度化技術では、特性の異なる特性の異なるニューラルネットワークを組み合わせる独自の手法を組み合わせる独自の手法を取り入れた。顔のパーツの特徴を捉える深い構造を持つネットワークと、顔全体の特徴を捉える広い構造を持つネットワークを組み合わせ、高精度な認証を実現している。また、撮影環境に応じて特徴量を変更する独自技術も駆使する他、処理の高速化を目的としてネットワークの軽量化、マルチタスク構造の採用なども行っている。
提供を開始する顔認証技術APIは、同社のIoTサービス「µSockets(ミューソケッツ)」のマイクロサービスとして実装されている。Web API(REST)であるため、顧客は自らのWebサイトやアプリケーション、業務システムなどにパナソニックの顔認証技術を簡単に組み込むことができる。セキュリティにも十分に配慮しており、登録用顔画像や認証用顔画像を処理終了後直ちに削除し、顔特徴量データもパナソニックのプログラムでのみ扱えるバイナリとして保存する。
APIのサービスラインアップは、顔認証のユーザー登録、削除、認証といった基本機能を提供する「スタンダードエディション」、ビジネス利用で必要となることが多いアカウント管理やレポート機能なども提供する「プロフェッショナルエディション」、個人情報保護に則した監査証跡機能を提供する「エンタープライズエディション」の3種類を用意する。このほど提供を開始したサービスはスタンダードエディションで、プロフェッショナルエディションは2019年度中、エンタープライズエディションは2020年度中の提供を目指す。
スタンダードエディションの価格は、登録人数と認証回数による従量課金制となる。登録ユーザー1人当たり5円、認証1回当たり1円と設定されており、「(競合となる)同精度の顔認証サービスと比較して半額から3分の1」(パナソニック コネクティッドソリューションズ社 イノベーションセンター IoT サービス事業統括本部⾧ 相澤克弘氏)の料金だという。
パナソニックは顔認証ソリューションについて、今後3年間で300社への提供を目指す考え。マッチングアプリ「タップル誕生」を開発、提供するマッチングエージェントに、なりすまし抑止目的で顔認証APIを提供することも発表している。
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