SOLIDWORKSブランド 最高経営責任者(CEO)のジャン・パオロ・バッシ氏が3年ぶりに来日。年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019 東京」の主催者講演で「無限の可能性がここにある〜 Where Possibility Takes Form」をテーマに、SOLIDWORKSのこれからの方向性について語った。
「デジタルと現実が密接に結び付くサイバーフィジカルシステム(CPS)の世界において、“未来の設計”を実現するためには、従来のプロダクト思考からプラットフォーム思考へと考え方を変革する必要がある――」
3年ぶりに来日した、SOLIDWORKSブランド 最高経営責任者(CEO)のジャン・パオロ・バッシ(Gian Paolo Bassi)氏は、年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2019 東京」(開催:2019年11月8日)の主催者講演「無限の可能性がここにある〜 Where Possibility Takes Form」の中でこう投げ掛けた。
これは、米国テキサス州ダラスで開催された「SOLIDWORKS WORLD 2019」(会期:米国時間2019年2月10〜13日)で示された3次元設計ソリューション「SOLIDWORKS」の方向性、そして同社が目指そうとする今後のビジョンを表したもので、あらためて日本のユーザーに対してその考えを示した。
まず、バッシ氏はSOLIDWORKSがビジネスとして健全な成長を遂げていることを強調しつつ、ユーザーコミュニティーの存在の重要性、そして、そこから数々のイノベーティブな製品/サービスが生まれていることに触れ、「これらの成功は、SOLIDWORKSが設計において真に不可欠な存在であること証明するものだ」(バッシ氏)と述べた。
このような存在であるためには、決してぶれることのない「価値観」、時代の先を見据えた「ビジョン」、そして、その価値観を貫き、ビジョンを実現するためにどうすべきかという「戦略」が欠かせないという。
価値観においては、学びや教育に対するパッション(情熱)を挙げ、「学校で学んだことと、就職してから求められるスキルとの間にはギャップがある。そのギャップを埋め、教育を補完することが、われわれ(SOLIDWORKS)の務めだと考え、教育機関との協業などにも積極的に取り組んでいる」とバッシ氏。また、スタートアップの支援という側面からも、サポートプログラムを展開中で、既に世界4000社以上のスタートアップが利用しており、その成長を後押しする用意があることを強調した。
さらに、最も重要な価値観として挙げたのが、ユーザーコミュニティーの重要性だ。「世界中で200以上のユーザー会が存在し、互いにインスピレーションを与え合い、成長に向けて助け合っている。SOLIDWORKSにとってユーザーコミュニティーの存在は欠かせないものだ」(バッシ氏)とし、ユーザーへの期待に応え続ける姿勢をあらためて示した。
では、次の時代を見据えるビジョンはどうか。バッシ氏は「テクノロジーの進化により、どれほど自動化が進んでも、イノベーションは常に人間中心で創出されるものだ。自動化は人間の仕事や居場所を奪うものではなく、人間がより自由に働けるための助けとなるものでなければならない。それこそが自動化の神髄だ」と述べ、サステナブルなプロダクトの実現の重要性を説くと同時に、「科学技術(テクノロジー)に人間のイマジネーションが加わることで、人類が直面する多くの課題を解決できるようになるだろう」(バッシ氏)と語る。
そして、そのような世界の実現には、やはりテクノロジーの進化(未来の技術)が欠かせないとし、バッシ氏はIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)/機械学習、5Gなどのテクノロジートレンドを例に挙げ、「デジタルと現実が融合し、その境界があいまいとなり、全てがつながるCPSの世界がもうすぐそこに待ち受けている。そのとき、設計はどうあるべきかだろうか」と投げ掛け、SOLIDWORKSの戦略のベースとなる“未来の設計の姿”について次のように示した。
CPS時代の未来の設計は、「インテグレーション」「オートメーション」「シミュレーション」の3つの方向性で語ることができるという。
「CPSとは、全てがつながる、複数領域をカバーするシステムである。設計における複合領域とは、すなわちメカ、ソフト、PCB、電気・電子といった世界のことだ。これらがインテグレートされたシステムとして機能しなければならない。“co-design”を実現できるものである必要がある」(バッシ氏)
オートメーションに関しては、ジェネレーティブデザインのようなアプローチを用いて形状を自動的に生成するというものの他に、「機械学習を活用することで、大規模なアセンブリの作成時間を大幅に短縮することも可能になるだろう」(バッシ氏)と述べる。
そして、シミュレーションに目を向けてみると「モノづくりが複雑化する中、単に応力やひずみばかりを見るのではなく、流体、空力、電磁場といったさまざまな要素を組み合わせた複合的な検証が行われるようになる」(バッシ氏)とし、今後はシミュレーションが至る所で活用され、複数領域をまたいだマルチフィジックスシミュレーションの重要性がより一層高まることを示す。
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