松岡氏は、シリコンバレーを拠点に、人間中心の暮らし統合プラットフォーム「HomeX」などを手掛けるPanasonic βのCEOに就任する。2019年10月から、パナソニック コーポレートイノベーション担当参与(兼)Panasonic β参与(兼)ビジネスイノベーション本部長となった馬場氏に替わり、Panasonic βやHomeXの事業を率いていくことになる。馬場氏は「注目を集めているラグビーワールドカップで例えれば、私は日本ラグビーフットボール協会、松岡(氏)は日本代表チームのヘッドコーチといったところだろう」と語る。
松岡氏はPanasonic βやHomeXの今後について「入社して日が浅いこともあってまだ明確なことはいえない。ただし、暮らしや家というプライベートな空間向けなので、すごい勢いで入り込んでいくのは難しいのではないか。(プライベートな空間というものを)リスペクトしなければならない。2年以内に新しいプロダクトを出す計画だが、そこでジャッジするのではなく、もう少し長い目で見てほしい。Nestと同じで、発表から5年くらい後に評価できる状況になっているのではないか」と強調した。
また、パナソニックという企業については「実際に入社してもそれほどの驚きはない。グーグルと思ったより似ていると感じた。ソフトウェア企業であり先進的ともいわれるグーグルでさえ事業のサイロ化は起こっている。私はHPの社外取締役を務めているが、長い歴史を持つ企業は、その歴史が故の良い所も悪い所もあることはよく知っている。パナソニックは事業の効率化で縦割りの制度(事業部制)を採用したが、今はそれが行き過ぎている状態。縦割りの組織を近づけていくのが私の役割だ」(松岡氏)としている。
そして、最も重視していることとして、製品やサービスを開発する際にユーザー目線になることを強調した。「パナソニック創業者の松下幸之助氏は、主婦を家事労働から解放するために製品を開発したが、これと同じ考え方にもう一度立ち戻る必要がある。UX(ユーザー体験)デザインやデザイン思考などが必要だが、現在のパナソニックはその逆の傾向がある」(松岡氏)という。
ユーザー目線での製品開発の一例として挙げたのが電子レンジだ。松岡氏は「300種類もの料理が作れるが、ユーザーインタフェースのせいで一度も作られない料理がある。ユーザーの使いやすさの視点に立ち、不要な料理レシピがあればそれを削るという決断も必要だ」と述べている。
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