結果モデルの修正が完了したら、いよいよ3Dプリント! といきたいところですが、最終チェックとして同じ条件で解析をかけておきましょう。結果として、そのままの状態では弱かった箇所が、しっかりと修正されていることが分かります。
近頃は、積層造形方式の3Dプリンタがかなり気軽に使えるようになっています。今回のモデルも「Raise 3D」で早速出力してみました。サイズが180×80mmほどの大きさですが、出力時間は6時間半程度で行うことができました。
今回は積層造形で出力しましたが、光造形や金属プリンタに対応した出力サービスも続々と登場してきているので、目的に応じて使い分けるのもよいでしょう。例えば、試作は自身(自社)で保有している安価な3Dプリンタで行い、最終パーツの製造は出力サービスを活用するといった具合に、設備投資を抑える方法も一般的になりつつあります。
ついでといっては何ですが、試しに肉厚1mmのアルミ板を板金形状で製作した場合の応力集中を解析してみました。想像通りですが、真ん中の部分がどうしても薄くなるので、弱くなってしまいます。応力が集中する部分だけ、リブを立てたり、別の板を挟み込んでみたりしてもよいかもしれません。
フォームでモデリングした形状も最後にご紹介した板金デザインも、もともとは今回のジェネレーティブデザインの計算結果を基にし、力の流れを可視化したことによって作ることができたデータです。コンピュータが設計をアシストしてくれるすごい時代になってきました。
「はじめてのジェネレーティブデザイン」ということで、Fusion 360のジェネレーティブデザインを使ってみましたが、いかがでしたでしょうか。筆者が使ってみて実感したのは、モノづくりを行うに当たっては、単にジェネレーティブデザインの機能やトポロジー最適化の機能だけでなく、やはり解析機能を使った事前検証や3Dモデリング機能を利用した修正、強化対応など、3Dツールを全て使ってこそ効果が大きいということでした。
今後もFusion 360のジェネレーティブデザインはどんどん機能強化されていくようですので、筆者も楽しみにしています。いろいろな最適化ツールが注目されてきた近年ですが、本連載を通じて、ジェネレーティブデザインが1.設計の初期段階で利用でき、2.結果形状がすぐに利用可能であるということをご理解いただけたら幸いです。
また、筆者が所属するVOSTでは、クラウドクレジットを利用できるジェネレーティブデザインセミナーも開催していますので、ご興味のある方はぜひご利用ください。これを機に、皆さんもFusion 360でジェネレーティブデザインを手軽に始めてみてはいかがでしょうか! (連載完)
濱谷健史(はまたに たけし)
1982年京都生まれ。株式会社VOST 技術本部長。3D CAD/CAMベンダーで製造業向けにコンサルティングの経験を積んだ後、メーカーで新規事業の立ち上げに従事。3D CADを利用した機構設計や、マシニングを使った部品加工をしていた経験を生かし、現在はFusion 360を広めるための講演活動や、法人向けにテクニカルコンサルティングなどを行っている。
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