では、実際にこれらの数値を流体解析ソフトで確認してみましょう。
翼の断面は、前述の通りNACA 2412を使用します。これを基に、翼のコード長は1m、翼の長さは5mとします。このモデルを3D CADで作成し、迎え角の値を0度から5度刻みで設定していき、その形状を流体解析ソフトにインポートします。流体解析ソフト側では時速100ノットを想定し、秒速約50mとして定義します。
まず、翼の断面から見た空気の流れを確認していきます。
図6 迎え角15度:翼の上面の大部分で流れが剥離して渦を巻いている(RANSで解いているため、渦はきちんと表現されていないが、この状態でもある程度は見当が付く)。また、定常解析で計算しているが、失速するような状態になっていると、なかなか計算も収束しない(クリックで拡大)こうして得られた情報を基に、CLとαを以下のようにプロットしてみました。
結果からいうと、傾向は比較的よく捉えられている半面、精度の面では少々不正確な結果になりました。実際のNACA 2412よりも、全体として低い値になっています。モデルの設定において、まだきちんと考慮できていないパラメーがあるので、もう少し設定を見直す必要がありますが、傾向としてはきちんと捉えられた結果だと考えられます。
「流体解析は、構造解析以上に捉えどころがない」と感じている方は多いと思いますし、何よりも設定に用いた前提条件次第で解析結果が大きく左右されます。流体解析ソフトに慣れるという意味では、何かしら実験などで確かな情報が既に得られている現象を題材にして、解析を進めてみるのがよいかもしれませんね。(次回に続く)
水野 操(みずの みさお)
1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。
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