打ち上げコストを極限まで抑えた月面ロボ「YAOKI」、9割は3Dプリンタで製造:CEATEC 2019
ダイモンは「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)に出展し、超小型・軽量の月面ロボット「YAOKI(ヤオキ)」の展示デモを披露した。
ダイモンは「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)に出展し、超小型・軽量の月面ロボット「YAOKI(ヤオキ)」の展示デモを披露した。同社は2021年に日本初の月面探査を実施することを目標に掲げ、米Astroboticの月着陸船「Peregrine」にYAOKIを搭載することを発表している。
月面ロボット「YAOKI(ヤオキ)」の体験デモの様子
YAOKIの最大の特徴は小型・軽量である点だ。サイズは150×150×100mmで、重さは600g。2つの大きなタイヤとカメラを搭載した本体部からなる。従来の4輪タイプの月面探査クローラーと比較して体積比50分の1以下、重量比10分の1以下を実現し、1kg当たり約1.2億円かかるといわれる月輸送コストを大幅に削減するという。
本体にバッテリーを内蔵し、約6時間駆動する。緊急用のソーラーパネルも備える。充電は月面着陸船に戻って、非接触で行われる。2輪タイプであるため、転倒して起き上がれなくなるといったトラブルも起きない。
月面ロボット「YAOKI(ヤオキ)」(クリックで拡大)
「とにかくシンプルさに特化し、2つの車輪とカメラのみで構成することを目指した。機能も『走行する』『撮影する』に絞り、操作も自動走行などではなく、最も単純なリモコンによる遠隔操作を採用している。また、YAOKIの技術情報を公開し、オープンイノベーションを促進する動きにも力を入れている。広く技術やアイデアを募り、それらを集約した形で月面探査を実現したい考えだ」と、ダイモン CEO・ロボットクリエーターの中島紳一郎氏は説明する。
CEATECの会場で披露された展示デモ環境は、赤外線通信でYAOKIとリモコンを接続していたが、「月面では、月着陸船とYAOKIはWi-Fiで接続されることになる」(中島氏)。2021年の月面探査の段階ではYAOKIを1機のみ送り込む計画だが、将来的には複数台を月面に送り込み、相互通信しながらの隊列自動走行も視野に入れているという。また、2台のYAOKI(のカメラ画像)を用いて、立体画像を生成することも可能だとする。
月面ロボット「YAOKI(ヤオキ)」の本体前方(左)/側面(中央)/後方(右) (クリックで拡大)
YAOKIの設計開発は全てダイモンが手掛け、製造に関しても約9割は3Dプリンタ(光造形方式)を活用しているという。「実際に月面に持っていくものを3Dプリンタで製造するかは悩んでいるところだ。ただ、せっかくここまで3Dプリンタを活用してものを作ってきたので、熱や電磁波などの対策を施して、何とかこのまま(3Dプリンタで)やり切りたいという思いはある」と中島氏は述べる。
- JAXAが民間宇宙開発を支援、HAKUTOと共同研究契約
民間宇宙探査チーム「HAKUTO」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究を実施する。これまで実測データがほとんど存在しない、月遷移軌道と月面の宇宙放射線線量測定を試みる。
- 民間資本で月面を目指す! 「HAKUTO」のメカエンジニアが語る日本のモノづくり
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は日本発の月面探査を目指す民間宇宙開発チーム「HAKUTO」のメカニカルエンジニアを務める古友大輔さんにお話を伺った。
- 世界初民間月面着陸を諦めない、ispaceがシチズンやスズキなど新パートナー発表
月面開発ベンチャーのispaceは2019年8月22日、東京都内で会見を開き、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の計画変更と、シチズン時計、スズキ、住友商事などの新パートナーを加えたことを発表した。
- いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。
- 3Dプリンタは臨界点を突破したのか
新たなモノづくりの姿を示す象徴として「3Dプリンタ」は大きなムーブメントを巻き起こしている。しかし、3Dプリンタそのものは既に1980年代からある技術で過去には夢を追いつつも突破できない壁があった。かつての研究の最前線から今のムーブメントはどう見えるのか。東大名誉教授で現在は世界最大のEMSフォックスコンの顧問も務める中川威雄氏に話を聞いた。
- 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.