特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年08月26日 11時00分 公開

IoTで手術をスマート化、工場の技術を転用したデンソーの挑戦MONOist IoT Forum 名古屋2019(後編)(2/3 ページ)

[三島一孝,MONOist]

OPeLiNKがもたらす新たな価値

 手術室のネットワーク化は現在国際標準化が進んでおり、手術データをサードパーティーが活用するような世界も見えているという。また、チーム医療などが進む中で、手術状況を遠隔でも監視し、執刀医以外でもディスカッションや判断に携われるような仕組みなど、さまざまな検討が進められているという。

 奥田氏は「その中でOPeLiNKの役割は、それぞれの共通の土台を作るという役割だと考えている。誰でも使える環境を作ることで、各社の機器の標準化やそれらを活用した新たな価値なども生まれてくる」と考えを述べている。

 こうした中で新たなビジネス創出なども検討しているという。しかし「実際にはIoTによるビジネス化は難しく、なかなか新規ビジネスにつながっていないというのが実情だ。そんな中だが、1つ取り組もうと考えているのが、執刀医の判断を開放し、若い医師の教育に活用するという取り組みだ」と奥田氏は述べている。

 学会などでも発表されているが、手術における執刀医の経験手術数と患者の死亡率は強い相関関係があるという。死亡率を低減するためには経験を積むしかないが、これらの状況から経験の浅い医師には手術が回ってきにくい状況が生まれている。手術の映像などを活用した学習や教育などの仕組みは既に多くの医療現場で導入されているが、映像を見るだけでは理解できないことも多いという。

 「こう処置すればよいのになぜこうしなかったのかなどの『判断』については、映像を見ているだけでは分からない。しかし、関連する生体情報などを組み合わせて見れば、判断の理由を推測できるようになる。この『判断の根拠』を示す意味で、OPeLiNKを教育ビジネスに活用できないかと考えている」と奥田氏は今後の展開について述べた。

インダストリー4.0で注目集めるOPC UA、相互運用性を拡張

 ランチセッションでは、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の推奨通信規格として大きな注目を集めている「OPC UA」の動向について、日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長である岡実氏(オムロン)が講演を行った。

photo 日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長の岡実氏

 「OPC UA」は通信規格の1つで、産業向けでの相互運用を実現するオープンなインタフェース規格である。「OPC UA」が注目を集めたきっかけとなったのが、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の推奨通信規格として紹介されたことだ。岡氏は「その時期以降、検索数なども大きく増え、日本のイベントでも参加者が拡大している」と語る。

(※)関連記事:「OPC UA」とは何か

 「OPC UA」の規格策定や普及活動などに取り組んでいるのがOPC Foundationで、同団体の日本支部として日本OPC協議会が活動を行っている。会員数は2019年7月10日時点で698社に及ぶという。活動のビジョンとして「センサーからエンタープライズまで産業オートメーションの安全で信頼性のある相互運用」を掲げており、「OPC UA」はまさにこれを体現しているといえる。

 OPC UAが、インダストリー4.0を含むさまざまな取り組みの中で支持される理由として岡氏は「色が白いという点がある」と語る。「多くの産業用ネットワーク規格は機器ベンダーが開発したもので、機器との組み合わせを意識させるものが多い。OPC UAはそうした色がないだけでなく、ハードウェアへの依存関係もないので、さまざまな規格の機械と接続できる。そのため、OPC UAを軸とし、OPC UAを介してさまざまな規格のネットワークや機器をつなぐという動きが生まれた」(岡氏)とする。

 実際に2019年4月にドイツで開催されたハノーバーメッセ内で、OPC Foundationは「第1回 World Interoperability Conference」として、相互運用性を訴えるイベントを開催。それぞれの業界団体が持つ通信規格を、OPC UAと結ぶことで、他のITや機器と連携できる世界を訴えたという。「各種団体から350人以上が参加するなど、非常に高い関心を集めた」(岡氏)としている。

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