そして、この「空間のコントロール」で力を発揮するのが「1984年から磨いてきた音響シミュレーション技術と、パナソニックの電機メーカーとしての総合力だ」(松本氏)という。第1〜第2世代で実績を積み上げてきたノイズに強いアナログ回路設計技術やスピーカーの指向性制御技術に加えて、高度な音響シミュレーション技術に基づいたデジタル演算による音質補正によって空間をコントロールし、ステージ上の音を確実に捉えて全ての客席にそのまま届けられるというわけだ。
これらの音響シミュレーション技術は「PASD(Panasonic Acoustic Simulation Designer)」という名称で2018年1月に製品化されている。PASDは、ラインアレイスピーカーの構成を検討する「PaLAC(Panasonic Line Array Calculator)」、クラスタ配置の検討に用いる「AcSim(Acoustic Simulator) II」、現場調整のために音響測定や調整を行う「AutoFIR(Automatic FIR filter adjuster)」という3つの機能が1パッケージになっている。松本氏は「インパルス応答によるスピーカー高密度スピーカーモデリングデータに加えて、シミュレーションと音響測定の統合化で、シミュレーション精度を高めて現場での音響調整の負荷を軽減できる」と説明する。また、PASDのラインセンスを、セミナー受講者に対して無償提供することで、ユーザー層をさらに拡大していく取り組みも進めている。
RAMSA事業を統括するパナソニック CNS社 メディアエンターテインメント事業部 サウンドカテゴリー総括担当の直田孝幸氏は「国内市場だけでみてもプロ用音響システムが必要とされるイベントの公演数や来場者数は、この10年で約2倍になっている。RAMSAでは、高度なシミュレーション技術を活用することで、100Hz以下の低音や残響の中などこれまで難しかった音響制御に挑戦するとともに、劇場やコンサートホール、スタジアムのそれぞれの座席でどのように音が聞こえるのかを事前に知らせるなどしてアーティストやクリエイターの発想を広げる一助にもなりたいと考えている」と述べている。
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