フォルシア クラリオン エレクトロニクス(以下クラリオン)は2019年7月8日、埼玉県さいたま市の本社で記者説明会を開き、フォルシアグループの一員としての取り組みを紹介した。
フォルシア クラリオン エレクトロニクス(以下クラリオン)は2019年7月8日、埼玉県さいたま市の本社で記者説明会を開き、フォルシアグループの一員としての取り組みを紹介した。
クラリオンは2019年3月にフォルシア(Faurecia)の完全子会社となった。フォルシアはインテリアやシート、パワートレインといった事業部を持っており、クラリオンはインフォテインメントシステムやHMI(ヒューマンマシンインタフェース)、コネクテッドサービスを手掛ける4つ目の事業部という位置付けだ。
フォルシアは、車内空間全体を対象としたコックピットと、燃料電池車(FCV)などパワートレインの環境技術の2つを重点領域に据える。そのためコックピット領域では、インテリアやシートに、クラリオンが持つエレクトロニクスやソフトウェア、オーディオの技術を融合させていくことになる。
フォルシアの内装材のノウハウと、クラリオンのオーディオ技術を組み合わせることで実現するのは、従来のスピーカーが使用する振動板の代わりに、内装部材や窓ガラスをエキサイターで振動させて音を鳴らす技術だ。過去に日系自動車メーカーがミニバンの天井にエキサイターを取り付けた例はあるが、補助的な役割にとどまっていた。
クラリオンとフォルシアはエキサイターを積極的に使用することにより、スピーカー類の大幅な軽量化と小型化、コスト低減への貢献を目指す。また、従来のスピーカーと比べてドア周りの省スペース化が図れるため、居住空間の拡大、室内のデザインやシートレイアウトの自由度向上につながるとしている。今後、自動運転技術が高度化し、ドライバーが運転しない場面が増えた時に、車内のレイアウトの自由さが今以上に重視されるとしている。
エキサイターを使った新開発のオーディオシステムは、12cmウーファーと4スピーカーのシステムと比較すると重量が約5分の1、体積は18分の1、コストは3分の1に抑えられるという。20cmウーファーと4スピーカーのシステムと比較するとさらに小型軽量化することが可能で、コストは10分の1に低減できる。
ただ、単純にエキサイターを使ったシステムに置き換えると、音質が犠牲になってしまう。エキサイターでよりよい音を鳴らすには振動させる対象が軽く硬質な素材が望ましいが、既存の内装材は音響を前提にしていないため限界がある。
クラリオンは、フォルシアのインテリア部門が協力してエキサイターを使うことに適した振動板に近い内装材を検討して対応する。クラリオンの担当者は「カーオーディオメーカー単独で音質を追求しながらエキサイターを使うのは難しい。企業同士の共同開発というレベルでも、内装材の性質から音質にこだわるのは簡単ではない。フォルシアグループの一員になったからこそできることだと考えている」と語った。
また、エキサイターのみで高音から低音まで鳴らすことが可能であるものの、エキサイターは得意な音域が限られる。これに対し、クラリオンは市販向けに展開してきたフルデジタルサウンドスピーカーとも組み合わせることで音質を補う。フルデジタルサウンドスピーカーはパワーアンプが不要で、軽量かつシンプルなシステム構成にできる。また、電力を効率よくスピーカーの駆動や音の出力に変換することが可能で、従来のシステムと比較して消費電力が低減され、ヒートシンクも不要になる。
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