富士通は2019年8月5日、デジタル生産準備ツール「VPS(Virtual Product and Process Simulator)」の新バージョンを発売すると発表した。
富士通は2019年8月5日、デジタル生産準備ツール「VPS(Virtual Product and Process Simulator)」の新バージョンを発売すると発表した。新バージョン「V15L21」では、工程の順番や階層構造を表す工程ツリー画面を実装し、工程情報の作り込みを可能とした。各種システムとの連携機能も強化し、簡易的な製造プロセス情報(BOP:Bills of Process)管理ツールとしても利用できるとする。
VPSは製品設計から量産試作までのモノづくりプロセスを、仮想空間上に再現するソフトウェア。製品開発におけるフロントローディングを実現し、開発期間の短縮やコスト削減を支援する。富士通グループのデジタルプロセス(厚木市)が開発しており、顧客は累計で832社、4987ライセンスの販売実績を持つ。
VPSは主に4つのモジュールで構成される。3D CADデータから静的、動的干渉確認やメカ動作状況がチェックできる「DMU」、製品の組み立てプロセス検討を支援する「MFG」、工場生産ラインとプロセスを仮想空間上で検討できる「GP4」、仮想メカ上で制御系ソフトのデバッグ支援を行う「IOC」をラインアップする。また、現場の作業者向けに、VPS MFGで作成した組み立て手順情報とアニメーションで電子作業指示を実現する「製造指示Viewer」も提供。「製品設計から量産試作までを支援し、フロントローディングを実現する」(デジタルプロセス VPSビジネス部 部長の根本昭二氏)ソリューションとしている。
新バージョンにおける機能強化で背景となったのが、製造現場におけるデータ活用の高度化だ。根本氏は「ここ数年、生産領域のデータ活用高度化を進める動きが活発になっており、工程を軸にしたBOPの考え方に注目が集まっている」と述べ、新バージョンでは「3Dデータを使って、生産領域の情報を早い段階で高品質かつ効率的に作りこむことを実現した」ことが機能強化のポイントだ。具体的には、工程ツリー画面の新設、個々の工程の詳細確認を容易化、担当者別の工程表示機能の追加を行ったとする。
新設された工程ツリー画面では、「何を」「どの部品で」「どこで」「どのように組み立てるか」といった製造情報を工程ごとに集約し、工程の順番や階層構造を一覧で表示できる。事前にできる作業や並行してできる作業を考慮した工程計画を立てることが容易となる。また、背景に工場の平面図を取り込み、作業場所に各工程をレイアウトした工程ブロック図を表示することも可能となった。根本氏は「今回のバージョンアップで現場の状況をちゃんと転写できるようになった」と自信を見せる。
また、工程ツリー画面での一覧表示から、個々の工程ごとに付加された部品の一覧や工程の属性一覧表示に切り替えることが容易となった。作業者や設備などリソース別の合計工数を比較し、人数や生産台数別など複数パターンの検討を支援する工程分担機能も搭載。生産現場の最適化と生産性向上を支援する。
作成した工程情報は製造指示Viewerで閲覧することも可能な他、ERPやMES(製造実行システム)、WMS(倉庫管理システム)といった生産活動に関わる業務システムとの連携も実装された。VPSの販売価格は1ライセンス当たり400万円(税別)。2020年度末までに50億円の売り上げを目標としている。
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