続いてスプリンゼン氏は、マンマシンインタフェースの問題を取り上げた。ソフトウェアは、あらかじめ決められたことには対応できても、その範囲外の状況や発生した物事には対応しきれない。しかし、人間の頭脳は汎用的であり、想定外の状況にもある程度対応できる。これは重要なポイントであり、次世代システムを開発するためには必要条件になる。
同氏は、マンマシンインタフェースの問題の一例として「ボーイング(Boeing)の航空機『B737MAX』の墜落事故の原因は、パイロットとマシンをつなぐインタフェースそのものが複雑であり、全ての状況に対応しきれないことが原因かもしれない」と指摘する。緊急時システムのソフトウェアには、パイロットの動きをオーバーライドする機能が組み込まれていた。このソフトウェアのバグが事故の原因と報道されているが、ソフトウェアには必ずバグがあるものであり避けることができない。「大事なのは、こうした事態が発生した場合に、人とマシンがきちんとインタラクションできるかどうかだ」(スプリンゼン氏)。ボーイング機の墜落時に、パイロットが介入して人間がコントロールできる余地を残すか、もしくはソフトウェアがオーバーライドしてこの振る舞いをやめるようにプログラミングするかがカギであり、この作業は大変なものとなる。
EDAに対応するシステムは、VANTIQを活用すれば簡単に開発できるという。システムがイベントを観察し、パイロットがソフトウェアからコントロールを取り返したいと思えばシステムが自発的にパイロットへ操縦を返すという警告を出すようになる。EDAの考え方であれば、昔ながらのやり方よりも簡単に介入でき、将来的に人とマシンのコラボレーションを考えるとき必要不可欠なものになる。「システムの複雑化が進む中で、全ては自動化できない。EDAに対応するシステム開発は重要になる」(スプリンゼン氏)。
講演では、同社のシステムが採用された事例も紹介した。中国では、INESAと上海市政府からの共同の依頼により、同市内のエレベーターの状態をリアルタイムに監視するアプリケーションを開発した。現在、複数ベンダーの数百台のエレベーターを監視しており、今後は監視対象を25万台にまで増やす予定だ。VANTIQが採用された理由は、異なるエレベーターからリアルタイムに異なったフォーマットのデータを取得しなければならない要件に対して、VANTIQのイベントドリブンーキテクチャを使うことで、データの成形、システムの拡張、予知保全を行うことが簡単に実現できるからだという。今後、同システムは中国だけでなくグローバルに販売する計画もあるという。これにより、エレベーターのセキュリティに携わる人的コストの削減にもつなげられる。
ベルギーでは、フランスのパートナー企業であるInfoSquareが川などに設置しているIoTセンサーのデータに基づいて緊急事態を監視し、検知する洪水警報システムを、VANTIQが開発したシステムを用いて構築している。緊急事態が確認された場合、市民に危険な状態を知らせて最も近い避難所を伝える他、救助隊の派遣なども行う。どんな状況でもリアルタイムなチャットが可能であり、多言語でコミュニケーションできるメリットもある。
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