Xilinx(ザイリンクス)が産業機器や医療機器、監視カメラなどISM分野の事業戦略について説明。FPGAやプログラマブルSoCなどを用いた同社のソリューションは、ISM分野で求められる低遅延の条件において、GPUと比べて最大8倍のAI処理性能を実現できるという。
Xilinx(ザイリンクス)は2019年6月27日、東京都内で会見を開き、産業機器や医療機器、監視カメラなどISM分野の事業戦略について説明した。アプリケーションプロセッサとFPGA回路を集積したプログラマブルSoC「ZYNQ」や「ZYNQ Ultrascale+」の投入をきっかけに、2017年から同分野の売上高成長率は2.5倍に伸びており、日本市場では分野別売上高でトップに立っている。今後は、先行顧客にエンジニアリングサンプルを出荷したばかりの新デバイスACAP(Adaptive Compute Acceleration Platform:適応型演算プラットフォーム)「Versal」により、同分野の展開を加速したい考えだ。
ISM分野が対象にするのは、産業用ロボットやPLC、HMIといった産業機器、監視カメラをはじめとする視覚機器、手術支援ロボットや内視鏡、医用画像機器などの医療機器だ。同社 ISMマーケット担当 ダイレクターのチェタン・コーナ氏は「ISM分野では、品質、信頼性、ライフサイクル(製品供給期間)の長さが求められる。特に日本市場ではこれらの要求が顕著だ。品質、信頼性ともに年々評価を高めているし、最短で15年としているライフサイクルも実際には20年以上対応できている」と語る。
またコーナ氏は、日本国内での採用事例として、エレックス工業が開発する天文台の望遠鏡向け機器や、ソニーセミコンダクターソリューションズの次世代CMOSセンサーインタフェース「SLVS-EC」、パナソニックの監視カメラ、アバールデータの画像入力ボード、デジタルメディアプロフェッショナル、東芝デジタルソリューションなどのコメントを紹介した。
ISM分野では扱うデータの量が爆発的に増えており、そのIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)への活用が大きな課題になっている。現在、1日に生成されるデータの量は2.5エクサバイト(エクサは1018)にのぼる。全世界のデータの90%は過去2年間に生成されたものであり、2019年にAIで使用されるデータの量は60ヨタバイト(ヨタは1024)になるという調査結果もある。
産業用IoT(IIoT)やヘルスケアIoT(HcIoT)における、FPGAやプログラマブルSoCなどザイリンクス製品の採用が広がる理由は3つある。1つ目は製品の迅速な市場展開を可能にし、ROI(投資対効果)を高められる「適応性」だ。2つ目は、AIの効率的な活用を可能にする「インテリジェンス」である。
そして3つ目は「スケーラブルなプラットフォームであること」(コーナ氏)で、最も大きな採用理由でもあるという。従来は製品ごとにプロセッサアーキテクチャ、OS、通信プロトコルが異なるため開発も個別に行ってきたが、IoTやAIを活用した今後の開発ではIT、OT(制御技術)、クラウドを要件に合わせて組み合わせられるようにする必要がある。この課題の解決に最適だったのがZYNQやZYNQ Ultrascale+だったというのが、コーナ氏の見解だ。
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