観測ロケット「MOMO」の打上成功から何が生まれるのか、次なる挑戦は「ZERO」だからもうホリエモンロケットと呼ばないで(4/4 ページ)

» 2019年06月06日 10時00分 公開
[大塚実MONOist]
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北海道の新たな成長産業になれるか

 ただ、最大の課題は、技術開発よりもむしろ、資金調達といえるかもしれない。大規模化するZEROでは、MOMOとは桁が違う金額の開発資金が必要になる。同社はこれまで、北海道内の金融機関や企業を中心に数千万円規模の出資は受けていたが、ZEROのためには、数億円、数十億円規模の投資も欲しいところだ。

超小型衛星用ロケット「ZERO」のイメージCG 超小型衛星用ロケット「ZERO」のイメージCG(クリックで拡大) 出典:IST

 新たな投資を得られるかどうかを考える上で、今回の成功が与える影響は、決して小さくはないだろう。超小型衛星の需要の高まりを受け、超小型ロケットの開発は世界で進んでいるが、実際に宇宙にまで行けたのは少数※4)。同社は話題先行に見られがちだが、口先だけでは、物理が支配する宇宙まで行けない。実力を示したことで、見る目が変わるかもしれない。

※4)関連記事:ロケットも衛星も「超小型」が熱い、激化する競争の行方はどうなる?

 ISTが目標とするのは社名にある通り「インターステラ(恒星間)」まで出て行くことだが、そのためにはまずZEROを速やかに完成させ、超小型衛星のマーケットに食い込み、ビジネスとして成功させる必要がある。この分野ではRocket Labが着実に実績を増やしており、状況は既に2番手3番手争い。開発の大幅な遅れは致命的となりかねない。

 堀江氏は、「10年スパンなら、SpaceXのマーリンやラプターに比肩するような大型エンジンを作ることも可能」と強気だ。「僕らが小さいエンジンを作っているのは、単に資金が無いから。しかしZEROが成功すれば、その開発資金が得られる。大型ロケットを作れば、有人飛行もできる」と、この先の展望を熱く語る。

 同社の活動には、地元自治体からの期待も大きい。同社はまだ社員数十人の規模だが、ロケットが大型化し、打ち上げも頻繁に行われるようになれば、この地に大きな雇用が生まれる。ZEROの打ち上げには新たな射場が必要となるが、大樹町は整備を進める意向を示しており、全面的に同社をバックアップする。

 大樹町が「宇宙の町づくり」を始めたのは、もう30年以上も前の話だ。MOMO3号機の成功により、大樹町にはついに民間宇宙基地が実現した。これまで、国内の宇宙基地は鹿児島県に2カ所あるだけだったが、北海道に新たな“宇宙への玄関口”が誕生した意味は大きいだろう。さらに発展するかどうか、全てはZEROの成否にかかっている。

打ち上げ後の射点 打ち上げ後の射点。この場所が、日本の新たな宇宙への玄関口となった(クリックで拡大)
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