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いすゞと日野が開発した国産初のハイブリッド連節バス、そのモノづくり力(前編)エコカー技術(1/4 ページ)

いすゞ自動車と日野自動車は2019年5月27日、両社で共同開発した技術を基にした「エルガデュオ」「日野ブルーリボン ハイブリッド 連節バス」の発売を発表した。本稿ではこれに先立ち、同年5月24日に開催された共同開発技術の発表会の内容を紹介する。

» 2019年05月28日 09時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 いすゞ自動車と日野自動車は2019年5月27日、両社で共同開発した技術を基にした「エルガデュオ」「日野ブルーリボン ハイブリッド 連節バス」の発売を発表した。本稿ではこれに先立ち、同年5月24日に開催された共同開発技術の発表会の内容を紹介する。

 前編では、ハイブリッド連節バスに新たに搭載された技術を紹介し、後編ではこれらを製品として送り出すジェイ・バス宇都宮工場でのモノづくりの様子を紹介する。

photo いすゞ自動車と日野自動車が共同開発した連節ハイブリッドバス(クリックで拡大)

高まる「連節バス」への期待

 国内の路線バスでは運転手の不足が深刻化しており、輸送力を確保するのに苦しむ状況が生まれている。一方で、大型イベントなど一時的に大量の輸送力を必要とする場面も従来以上に増えている。これらを両立させるためには、1人の運転手が輸送できる乗客の量を増やす必要があり、その解決策として大きな注目を集めているのが「連節バス」である。

photo いすゞ自動車 バス商品企画・設計部 チーフエンジニア 鈴木隆史氏

 連節バスとは、2両以上の車両を1つに結んだバスである。車両を結ぶことで1人の運転手でより多くの乗客を運べるようになる。海外などでは多くの都市で導入されているが、日本では一部に限られ、導入している場合も海外から輸入して対応してきた。しかし「海外で生産したものを船で運ぶため、発注から納品まで非常に時間がかかる他、日本仕様に改造する必要があった。それでも日本の使い勝手とは異なる。その他、壊れても部品がすぐに手に入らないなどの課題があり、国産を望む声が大きかった」といすゞ自動車 バス商品企画・設計部 チーフエンジニア 鈴木隆史氏は語る。

 いすゞ自動車と日野自動車では、これまでにも2004年からバス事業で協業を行ってきた。加えて、2008年には環境技術として後処理装置での協業、2016年にはITS技術での協業を発表しており、協力関係を深めてきた。

 新たな国産ハイブリッド連節バスでも、連節バス特有の技術を共同開発した他、これらの協業で培った環境対応技術およびITS関連技術を搭載し、バスの高度化に取り組む方針を示している。

いすゞ自動車と日野自動車が共同開発した、国産初の連節ハイブリッドバスの動き(クリックで動画再生)

 開発のコンセプトとして鈴木氏は「連節バスの利点を発揮するとともに日本特有の道路事情や使用環境などに配慮した使い勝手を実現。さらに通常のバスと同じサービス対応を行える体制を整えたことが特徴である」と述べている。

 連節により長くなる全長は17990mmとなり、11.2m車に比べると約1.6倍の長さとなる。全幅は2495mmで全高は3260mm。車両重量は25トンとなり、通常バスの14トンに比べると約1.8倍だという。ホイールベースは5500mmと6350mm。ただ、走破性を考慮した設計とし、最小回転半径は9.7mで、道幅が7000mmあれば問題なく曲がることができるという。

photo ハイブリッド連節バスの走破性に関する資料(クリックで拡大)出典:いすゞ自動車、日野自動車

 乗客定員数は最大で120人で、通常の約1.5倍の数を乗せることができる。ただ乗客数が増えれば、乗降時間なども長くなる。これらに対応するために、乗降扉も通常より幅広のものを採用。前扉は通常850mmに対し連節バスでは1000mmに、中扉と後扉は1000mmから1200mmに広げている。

 鈴木氏は「海外製のものがあるとはいえ、連節バスの開発は国内では初めてのこととなる。そういう意味で基準となるような物差しがあらゆる面で不足しており、これらをユーザーなどにヒアリングをしながら作り上げていく作業が最も大変だった」と開発の苦労について述べている。

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