デンソーと愛三工業は、デンソーから愛三工業へのパワートレイン事業の一部譲渡と、デンソーの愛三工業に対する出資比率の引き上げについて検討を開始することで基本合意した。パワートレイン事業と将来の成長領域における競争力強化を目的としており、2019年秋をめどに正式契約の締結を目指す。
デンソーと愛三工業は2019年5月20日、デンソーから愛三工業へのパワートレイン事業の一部譲渡と、デンソーの愛三工業に対する出資比率の引き上げについて検討を開始することで基本合意したと発表した。パワートレイン事業と将来の成長領域における競争力強化を目的としており、2019年秋をめどに正式契約の締結を目指す。
今回の基本合意は大まかに2項目に分かれている。1つは、デンソーがパワートレイン事業で扱うフューエルポンプモジュールなどの一部製品について、開発から生産、販売まで一連の事業を愛三工業に譲渡することの検討だ。これにより、生産の効率化や低コスト化を追求し、継続的なパワートレイン製品の開発と生産を行えるようにする。
もう1つは、両社の相互連携を強化するために、トヨタ自動車が保有する愛三工業の全株式をデンソーが取得することの検討である。現在、愛三工業の大株主の持株比率は、1位のトヨタ自動車が28.8%、2位のデンソーが8.7%、3位の豊田自動織機が7.6%となっている。デンソーがトヨタ自動車保有分を取得すると持株比率は37.5%となり、愛三工業はデンソーの持分法対象の関連企業になる見込み。発表当日の愛三工業の株価終値652円から計算すると、デンソーの取得額は約118億円になる。
両社は「パワートレイン領域における重複分野を統合し、当分野の競争力向上を目指すとともに、限られたリソーセスを新たな成長分野へシフトし、さらに連携を強化することで、将来のモビリティ社会の実現に貢献する」(リリース文より)としている。
なお、今回の基本合意は、トヨタ自動車が2019年4月に発表した車両電動化技術の特許実施権の無償提供と深く関係している。この発表では、トヨタ自動車が電動化技術のシステムサプライヤーになることも見据えており、そのパワーコントロールユニットをはじめとする電子部品事業をデンソーに集約することも決めた※1)。
※1)関連記事:トヨタは電動化技術のシステムサプライヤーになる、「HVは賞味期限切れではない」
デンソー自身も、自動車の電動化領域で開発、生産を強化するために2018〜2020年度まで3カ年で1800億円を投資する方針を示している※2)。また、アイシン精機と折半出資で立ち上げた新会社「BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)」により、トランスアクスルとモータージェネレーター、インバーターをパッケージ化した駆動モジュールを供給する。
※2)関連記事:広がるデンソーの電動化分野、トヨタの事業移管や特許開放、アイシンとの新会社で
その一方で、愛三工業の主力事業であるフューエルポンプモジュールなどは内燃機関用の部品であり、自動車の電動化の進展により大きな成長は見込めなくなっている。そういった事業をデンソーから愛三工業に移管統合することで、競争力を高めていくことが両社の狙いとなる。なお、デンソーが愛三工業への出資比率を高めることで、しばらくは内燃機関と電動システムの組み合わせになる自動車のパワートレイン開発に貢献できるよう、相互連携を深めることになりそうだ。
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