製造業ではスマート工場化への取り組みは盛り上がりを見せているが具体的な成果につながらないケースもまだまだ多い。工場についてのワークショップなどを担当する富士通 オファリング推進本部 AI&IoTオファリング統括部 オファリング企画部の川上裕介氏は「スマート工場化を進めてデータを取得できるようになっても『どういうデータが取れるのか』からスタートしたものは、実証でストップしその後に生かされていないケースも多く見られる。重要なのは『何がやりたいのか』という点だ。具体的にはKPI(重要業績評価指標)が明確化できていないというケースが多い」とスマート工場化の課題について語る。
そこで同ワークショップで推進しているのが「上下両方からのアプローチ」(川上氏)である。まず工場内のデータ活用で具体化したい価値を明確化し、その実現に必要なデータは何かを明確化する。そしてそれを取得するためのツールやセンサーなどを具体的に考えていくという流れである。「ありたい姿からバックキャスティングで考えていくのが重要だ。何を見たいかというところからスタートする。そのための支援を行うのがワークショップの狙いだ」と川上氏は述べている。
ワークショップは以下のような流れで進めているという。
ユニークなのがワークショップツールである。川上氏は「意味のあるKPIを設定できるかが重要だ。そのためにDTCではさまざまなツールを用意している」と述べている。以下で実際にワークショップのイメージを見てみよう。
まず、工場内のどういうユーザーがどういう課題を持っているのかというのを洗い出す作業がある。基本的にはツール内に主な課題となるような項目が用意されており、それをユーザーごとに分類していく。星マークでの重み付けなども可能だ。
課題が明確化できれば、ユーザーごとに見たいデータやKPIなどを設定する。これもツール上で選択するだけで可能だ。
設定した課題とKPIについては、それぞれの環境に応じてマトリクスで確認することが可能となる。
こうしてできたKPIを満たす「工場全体の最適化」のコンセプトを作り、プロトタイプ製作と実証へと進んでいくという流れである。川上氏は「同じ製造業でもKPIの設定やマトリクスの構造は大きく異なるケースも多い。ワークショップを通じて数多くの類型も蓄積できているので、近い類型からKPIの設定方法などを提案することも可能としていく」と述べている。
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