大東建託は2019年3月19日、同社が開発中の建築現場向け協働ロボット「D-AVIS(デービス)」の現場試行を報道陣に公開した。同ロボットは人手不足が深刻化する大工の作業省力化と施工品質の均一化が狙い。住宅建築現場のニーズを踏まえ、現場で簡単に分解、組み立てを行えるようにしたことが特徴だ。
大東建託は2019年3月19日、同社が開発中の建築現場向け協働ロボット「D-AVIS(デービス)」の現場試行を報道陣に公開した。同ロボットは人手不足が深刻化する大工の作業省力化と施工品質の均一化が狙い。住宅建築現場のニーズを踏まえ、現場で簡単に分解、組み立てを行えるようにしたことが特徴だ。
建設業界は人手不足と高齢化が深刻化している。大東建託では住宅建築で内装など仕上げ作業を手掛ける協力会社の造作大工登録人数が2015年からの5年間で約18%(1475人)減少した。
さらに、50代と60代の占める割合が42.5%と非常に高く、熟練工の減少も喫緊の課題だ。大東建託で施工品質管理部 部長を務める泉和宏氏は、「造作大工の減少で工期は長期化する現状だ」と建築業が抱える課題を語る。
この状況を打破すべく大東建託は施工ロボットの開発を決定し、ロボットシステムインテグレーターのエイチ・アイ・デーと2017年から共同研究を開始した。今回開発したロボットの名前であるD-AVISは「Disassembly」「Assemble」「Variety」「Innovative」「Smart」の頭文字を取った。この名前は住宅建築の現場という限られたスペースで大工がロボットを容易に分解、組み立てでき、多様な作業に対応するというコンセプトを示している。
同ロボットでは壁面と天井に仮留めされた石膏ボードのビス留め作業を自動化する。石膏ボードのビス留め作業は、ねじ長さや施工間隔などが国土交通大臣認定で規定されており、大東建託でLDK間取りを持つアパートでは1戸あたり約1万500発のビス打ちが必要となる。天井の施工では長時間にわたり重いビス打ち機を持ちつつ上を向く作業が発生するため大工の業務負荷が大きく、ビス打ちによる労働災害も発生していたという。
今回試行を行うD-AVISの試作機では、安川電機の6軸多関節協働ロボットアーム、Ensensoの3Dカメラ、ロボットと3Dカメラのコントロールボックス、ロボットリフター、日本電産シンポの無人搬送台車を組み合わせた。総重量は約180kgだが、ロボットアーム、コントロールボックス、リフター、無人搬送台車に分解することで、「2階の現場にも2人がかりで搬入できる」(泉氏)とする。ロボットの分解、組み立ては10本のボルト脱着と配線作業のみとし、2人で行うと15分で完了するという。
D-AVISの制御は大東建託の現場管理システム「名監督システム」によって行う。同システムは施工現場からタブレット端末などで操作でき、同システムから施工対象のアパート商品タイプと部屋を選択するとロボットがビス打ち場所を読み込む。その後、システムから指示された場所にロボットを据え付け、現場の安全を確認した後に起動ボタンをクリックすると自動で1部屋分のビス留めが開始される。造作大工が石膏ボードを仮留めし、ロボットがビス打ちを行う流れ作業化ができるため、アパート1棟の施工で4.5人工分の省力化が実現する見込みだ。
今回の試行で得られたデータや現場の反応から、両社は2019年10月から量産機開発に着手する予定だ。量産機では軽量化を行い総重量を約100kgとすること、分解組み立て時間を試作機から半減すること、施工の静音化を行い休日夜間での無人施工に対応することなどを目指す。2020年12月には量産機を実現場に展開する方針だ。
大東建託は同ロボットの提供形態について現時点で未定だが、「造作大工を抱える工務店に販売するか、われわれがリースをする」(泉氏)といった方法を検討している。販売する場合の想定価格は500万円前後になるとし、「月に3現場をロボットに任せることで5年でペイできる」(同氏)コストメリットがあるという。
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