名古屋大学は、X線結晶構造解析手法を用いて、細胞同士を密着させてバリアを形成するタンパク質の1種「クローディン3」の構造を原子レベルで明らかにした。
名古屋大学は2019年2月26日、細胞同士を密着させてバリアを形成するタンパク質「クローディン3」の構造を解明したと発表した。同大学細胞生理学研究センター 研究員の中村駿氏らと大阪大学の共同研究によるもので、クローディン3の形を原子レベルで明らかにした。
クローディン3は、皮膚や血液脳関門の形成など、生体内のバリア機能を担うタンパク質「クローディン」の1種だ。クローディン3の構造は、親指の付け根に当たる部分を起点とし、手首より上の部分に相当する細胞外領域が大きく屈曲していることが知られている。研究グループは今回、この屈曲した構造に着目した。
X線結晶構造解析という手法を用いてこの構造を観察したところ、屈曲の起点となる親指の付け根に相当する部分に、プロリンという種類のアミノ酸残基が存在しており、これが屈曲を引き起こしていると考察された。
そのため、プロリンを他のクローディンに存在するアラニンに置換したクローディン3を作製して観察した結果、屈曲は見られず、直線型の構造が見られた。つまり、クローディンの全体構造は、親指の付け根部分のアミノ酸残基の違いで屈曲型または直線型となり、手首の傾きが変わるように細胞外領域の傾きが変化することが分かった。
また、屈曲型クローディン3よりも直線型クローディン3の方が強い接着力を持ち、隣り合う細胞同士を密着させる接着装置「タイトジャンクション」の接着力に影響があることが明らかとなった。
今後は、特定器官のバリアを経由する新しい薬物送達法の開発などへの応用が期待される。
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