APIエコノミーが主導する米国の医療データ連携とAI:海外医療技術トレンド(44)(1/3 ページ)
本連載ではこれまでにも何度か米国の医療データ相互運用性標準化動向を紹介してきた。これに関連して、新たな経済インセンティブの仕組みづくりが加速している。
本連載第37回および第40回で、米国の医療データ相互運用性標準化動向を紹介したが、これに関連して、新たな経済インセンティブの仕組みづくりが加速している。
2018年12月12日、米国保健福祉省(HHS)の公民権室(OCR)は、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)の規則改正に向けて、情報提供依頼(RFI)を発出した(意見募集期間:2019年2月11日まで、図1参照、関連情報)。
OCRは、「価値に基づく医療(VBHC)」を促進するというHHSの目標を満たすため、どのような方法でHIPAAプライシー規則を修正できるかについてのインプットを広く求めているほか、以下のような点についても意見を求めている。
- 治療およびケア調整のための情報共有の推奨
- ケアにおける親の関与の促進
- オピオイド危機および重大な心の病への取組
- 経済的および臨床的健全性のための医療情報技術に関する法律(HITECH法)が要求する治療、支払、医療事務のための保護対象個人情報(PHI)の開示に関する説明
- 特定の供給者が、プライバシー方針に関する通知の受領確認を得るために誠意努力するよう求める現行の要件の変更
その後、2019年2月8日、HHS傘下のメディケア・メディケイド・サービス・センター(CMS)は、医療システムを通して、患者のアクセスを改善し、電子データ交換やケア調整を進めるMyHealthEDataイニシアチブを支援するための政策変更提案(「相互運用性・患者アクセス規則提案」)を公表した(関連情報)。
米国保健福祉省(HHS)メディケア・メディケイド・サービス・センター(CMS)の「MyHealthEData」(2018年7月19日公開)(クリックで再生) 出典:CMSHHSgov「MyHealthEData」
この規則案には、「Meaningful Use」の次の医療IT推進施策である「Promoting Interoperability(PI)」(関連情報)に関わる医療供給者や医療保険事業者向けの制度的仕組みや技術要件などのルールが記述されている。同案の概要は以下の通りである。
- サードパーティー・アプリケーションや開発者を介して患者情報をより利用可能なものにするために、医療提供者に対して、オープンスタンダードに基づくAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を導入、検証、モニタリングすることを求める
- 患者が医療保険プランを変更する際に、保険事業者は、ケア移行のための電子データ交換をサポートする必要がある
- 医療保険プランは、規則が施行されるまでの間、提案された規則を順守しなければならない
- 患者および医療供給者の双方が情報に簡単にアクセスすることを保証するために、医療保険プランに対し、API技術を介して、ネットワーク内の供給者に関する情報を加入者および加入見込者が利用可能なものにすることを求める
- 医療情報のフローを容易にするために、医療組織に対し、医療情報交換(HIE)など信頼できる交換ネットワークに参加するようインセンティブを与えられるべきである
- 連邦政府−州政府機関間のデータ交換頻度の増加による複数プログラム有資格者の体験を向上させる
- Promoting Interoperability(PI)プログラムにおける情報ブロッキングに関して、公向けの報告や予防措置を行う(例外規定あり)
- 全国医療保険プラン・医療供給者一覧システム((NPPES)にデジタル窓口情報を追加していない医療供給者の名前および個別医療機関識別情報(NPI)を、2020年下半期より公に報告する
- 病院および重要アクセス病院向けの参加条件(CoPs)を改正する
- メディケア・メディケイド・イノベーション・センターのモデルにおける相互運用性を前進させる
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