米国の医療データ相互運用性標準化政策の中で、重要な役割が期待されるAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)。今回は、そのプライバシー/セキュリティ対策動向を紹介する。
本連載第37回で取り上げた米国の医療データ相互運用性標準化政策の中で、重要な役割が期待されるAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)。今回は、そのプライバシー/セキュリティ対策動向を紹介する。
米国政府は、オバマ政権発足直後、2008年のリーマンショック後の景気浮揚策として「2009年米国再生再投資法(ARRA)」および「経済的および臨床的健全性のための医療情報技術に関する法律(HITECH)」を制定し、医療機関における電子カルテ導入支援策「Meaningful Use Stage 1」(関連情報)を推進してきた。
電子カルテの相互運用性や標準化に関しては、保健福祉省(HHS)傘下のメディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)と、国家医療IT調整室(ONC)が定義した標準規格(Certified EHR Technology)をクリアしたベンダー製品のみを、経済インセンティブの対象とすることによって促進を図ってきた。
その後、「Meaningful Use Stage 1」に続く導入支援策「Meaningful Use Stage 2」では、電子カルテで収集された医療データの2次利用におけるハブとなる医療情報交換基盤(HIE)に焦点が移った。医療情報交換基盤がハブ機能を果たすためには、データソースとなる各医療機関の電子カルテシステムのレベルで相互運用性が確保され、セキュリティ/プライバシー対策の要求事項が満たされていることが前提条件となる。2015年10月には、「Meaningful Use Stage 2」の要求事項を簡素化した「Meaningful Use Stage 3」(実施期間:2015〜2017年)が公表された(関連情報、PDF)。
このような流れの中で、医療データ2次利用の中核技術として注目されるようになったのがAPIだ。ONCは、APIについて、「あるソフトウェアプログラムが、他のソフトウェアプログラムが提供するサービスにアクセスすることを可能にする技術」と定義している(関連情報、PDF)。
ONCは、2015年10月に公表した「2015年版医療IT認証基準(2015 CHIT)」(関連情報)の中で、患者対面アプリケーションが、API経由で共通臨床データセットへのアクセスを提供する機能に関連して、以下の3つの基準を設定した。
そして、API基準に認証されるためには、以下の3つのプライバシー/セキュリティ基準を満たす必要があるとしている。
ただし、ソフトウェア開発者や医療機関、患者から見ると、APIのベネフィットとプライバシー/セキュリティリスクのバランスをとることは容易でない。そこで、2015年11月30日、ONC傘下の医療IT政策委員会(HITPC)と医療IT標準規格委員会(HITSC)は、医療のオープンAPI利用に関わるプライバシー/セキュリティ課題を取扱うために、APIタスクフォースを共同で招集し、翌2016年5月に提言書を公表した(関連情報、PDF)。
APIタスクフォースは、以下の3点を提言書のスコープに据えている。
そして、API向けの一般的支援の観点から、以下の2点を提言している。
次に、APIに対する監督/法執行措置の観点から、連邦取引委員会(FTC)が所管する連邦取引委員会法第5条を背景とする消費者/プライバシー保護、食品医薬品局(FDA)が所管するモバイル医療アプリケーションの患者安全対策、公民権室(OCR)が所管するHIPAAおよびプライバシー/セキュリティルールなどを想定して、以下の4点を提言している。
その上で、具体的なユースケースとして以下の10トピックを提示し、それぞれについて、背景、調査結果、提言を示している。
APIは、トランプ政権下の保健福祉省が2018年4月24日に打ち出した「相互運用性の促進(Promoting Interoperability)」ルール(関連情報)のコア技術となっているが、そのプライバシー/セキュリティ対策に関する議論は、オバマ政権時代から受け継がれたものである。
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