展示の見せ方という面で面白かったのがホンダの無限ブースだった。マンガの背景の中にクルマが置かれていたり、ブースの角にはレーシングバイクやフォーミュラーカーのパーツを人型ロボットのように組上げたオブジェが、門番のごとく外向きに立っていたりと、クルマやモータースポーツへより親近感を持ってもらおうという姿勢が強く出ているし、オートサロンというホビーをテーマとした場にも合っていた。
ブースで展示されていた、マン島TTレースの「TT Zero Challenge」クラスに参戦している電動レーシングバイク「神電」にも興味をひかれる。まだまだ発展途上なモビリティの電動化というテーマの中で、モーターサイクルのように人が操る感覚が重要なモビリティでの電動化への探求は、単純な動力性能だけでなく、感性的なフィーリングという面でも進化が進むことが期待できる。
なにせこれまでは電動の乗り物といえば、荒っぽい見方をするとゴルフカートの次はいきなり電車しかなかった訳だから、個人が操る乗り物としてのドライビングフィール、ライディングフィールというところでの進化はこれからだ。
東京オートサロンからは話が横道にそれた余談になるが、現在筆者はとある電動車いすの開発に関わっている。このためいろいろな電動車いすに乗る機会もあるのだけど、出だしから大きなトルクが出る電気モーター駆動の乗り物の場合、時速6kmまでの最高速度でしかない電動車いすでさえも、初めて乗ると動き出しのドカンとくるトルク感に一瞬身構えた。この動き始めの唐突さは、価格が数百万円する海外製の電動車いすでも同じで、決して安価なモビリティではないもの対して、商品の質感としては安っぽさやちゃちさを感じてしまうのだ。
ダイハツ工業とスズキのブースもそれぞれのらしさが出ていたブースだった。ダイハツは、2016年のオートサロンでのコンセプトカーとして展示していた「コペンクーペ」を、200台限定ながら市販することを発表した。これは、BMWの初代Z4(E85)から派生させた「Z4クーペ(E86)」と似たような関係性だが少し異なる。
コペンクーペのCFRP製ルーフは、ルーフからテールまで一体のボディーとなっており、小さなリアウィンドウは開閉するようになっているものの、Z4クーペの様にテールゲートを持つハッチバックボディーとはなっていない。元のボディーはオープン仕様のままCFRPルーフが固定されているだろうと想像される。コペンクーペの200台という限定販売数もうなずける構成だ(なお、Z4クーペは、オープンボディーにルーフサイドレールやクオーターピラーなどのフレームが追加された専用モノコックとすることで、テールゲート付きのクーペボディーを実現している)。
ダイハツブースには、あと2つの仕様が異なるコペンも展示されていた。現行コペンも登場して既に数年たつが、時間の経過の中でモデルを育てて行こうとしている姿勢が好ましい。ダイハツではもう1つ、赤と黒の2トーンボディーにゴールドホイールという組み合わせについても、問いかけを継続している様だ。今や昔の「シャレード デ・トマソ」を知る人も少ないのだろうけれど、ブースの説明員に聞いてみると、逆に新鮮に映る人も多いとのことだった。
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