「スープラ」や「マツダ3」などが注目を集めた「東京オートサロン2019」。プロダクトデザイナーの林田浩一氏が、各社の展示内容やコンセプトカーを斬る。
新年初めの自動車イベントといえば、海の向こうでは「デトロイトモーターショー」や近年自動車メーカーによる未来観のプレゼンテーションの場としての色が濃くなった「CES」という2つの大きな展示会が有名だが、日本だと「東京オートサロン」になるだろう。
東京オートサロンは、ショップ自慢の改造車の見せ合いっこする業界文化祭的な、チューニングカーのショーから始まった。その一方で、自動車メーカーの出展が増えてきたり、走りの性能訴求だけでないさまざまな切り口からのカスタマイズ車両の展示が増えてきたりと規模も大きくなり、ホビーとしてのクルマを楽しむ人たちのイベントへと変化してきている。
モーターショーが、新技術や新たな利便性や実用性などを切り口に「未来への期待感」を見せる場とすれば、オートサロンはホビーをテーマに「今の楽しみ方」を見せる場という違いを感じる。そしてこの違いが、それぞれのショーの魅力でもあると思っている。とは言いながら、筆者自身は必ずしも毎年通っているわけではないのだけど、今回は新しい「スープラ」や「Mazda3(マツダ3)」が見られるらしいのと、ついでに仕事で関わりのある企業との軽い打ち合わせなどもあって、「東京オートサロン2019」に参加することになった。
東京オートサロンも、今や国内だけでなく海外の自動車メーカーのブースが増えてきた。モーターショーでは会場全体で、一定の同じ雰囲気のブースが並ぶが、オートサロンでは、小規模なショップブースだけでなく、自動車メーカーのブースでも、ホビーをお題にしながら見せ方の違いが結構あるのも面白い。
トヨタ自動車では、カムフラージュ柄の偽装ラッピングが施された試作車ながら、ほぼ量産仕様と思われる新型スープラがデトロイトモーターショーより先に公開された。「BMW Z4」とエンジンやプラットフォームを共用し、オーストリアのマグナ・シュタイヤー(Magna Steyr)の工場で作られるという、これまでのトヨタ車と異なるバックグラウンドから創られたクルマということでも興味をひかれる。
実車を見た印象では、シルエットは前モデルのスープラと似た印象もあり、長い空白期間がありつつもスープラというモデルをうまく引き継いでいこうという姿勢も伺える。その一方で、ボディーサイズに対し、ずいぶんたくさんの造形要素を盛り込んで「ちょっと欲張りすぎなんじゃないの?」という印象も受けた。形を見えにくくするための迷彩柄のラッピングを纏ったボディーでもそう感じるので、販売が開始されて、路上で見慣れてきた頃に、感じ方はどう変化していくだろうか。
マツダは、2018年11月の「ロサンゼルスオートショー」でワールドプレミアした新型マツダ3の国内初お披露目が目玉。筆者が、今回のオートサロンに足を運ぼうと思った理由の1つでもある。
2017年の東京モーターショーでのコンセプトカー「魁コンセプト」は、ハッチバックボディーだったが、量産モデルのマツダ3としては、ハッチバックとセダンの2本立てとなる。コンパクトカーでハッチバックとセダンの両方を作り分ける場合、フェンダーやドアパネルなどを共用することでコストを抑えるということも多いが、マツダ3では、それぞれが専用パネルとしている。
ハッチバックは、キャビンとボディーを一体化させた1つの塊の中で、キャビンの比率が小さく軽めに見せてスポーティ感も出しているのに対し、セダンはプレスラインの入ったサイドパネルにより、前後方向に視線を誘導している。こちらはコンパクトセダンながら、少しでも伸びやかさを感じるようにというわけだ。個人的にはハッチバックの方が、街中での見え方がより楽しみだ。
マツダブースでは、ロードスターにCFRP(炭素繊維強化樹脂)製のディタッチャブルハードトップを装着した「ROADSTER DROP-HEAD COUPE CONCEPT」も興味深かった。このハードトップは発売を期待したオーナーも少なくないのではないだろうか。同じハードトップでも、現在ラインアップにある「RF」のボディーは、販売戦略上「ハードトップなし」とはいかなかった中での苦肉の策という成り立ちを感じていることもあり、こちらのディタッチャブルハードトップの方が視覚的な軽快感もあり、よりロードスターらしく思えた。
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