産業技術総合研究所と日本特殊陶業は、血清から抗体(IgG)を効率的に分離・精製するセラミックス粒子を開発した。抗体医薬品などの抗体製品の製造工程のコスト低減や高効率化につながることが期待される。
産業技術総合研究所は2019年1月28日、日本特殊陶業と共同で、血清から抗体(IgG)を効率的に分離・精製するセラミックス粒子を開発したと発表した。抗体医薬品などの抗体製品の分離・精製工程の短縮やコスト低減、高効率化が期待される。
副作用が少ない薬として注目される抗体医薬品は、抗体の分離・精製過程で抗体精製カラム用粒子を用いる。従来の抗体精製カラム用粒子は、抗体と特異的に結合するプロテインAなどを抗体結合用タンパク質として使用する。こうした抗体結合用タンパク質は高価で、また、粒子に結合した抗体の回収時に用いるpH2〜4の酸性溶液が、回収後の抗体の凝集・変性を引き起こす原因ともなっていた。
両社は今回、セラミックス粒子を活用して、抗体を吸着分離できるクロマトグラフィー用担体を開発。抗体結合用タンパク質を使用せず、従来と同等の抗体結合容量(〜50mg抗体/mL粒子)を持つ。
また、抗体との結合活性を高めるため、抗体サイズと同程度の孔径(10nm程度)を持つ多孔質ジルコニア粒子を使用した。この粒子は、100m2/g以上の高い比表面積と、0.5cm3/g以上の高い細孔容積を示す。粒子の表面はリン酸を含む有機官能基で修飾しており、リン酸と抗体の緩やかな結合を利用して温和な条件(pH7付近)で抗体を回収できるため、凝集や変成を起こさない。
実験では、1mLと0.2mLカラムに、この多孔質ジルコニア粒子を充填し、これらを用いて、血清中に含まれる3種類のタンパク質から抗体(IgG)の選択的な回収を試みた。その結果、従来のプロテインAを用いたクロマトグラフィー用担体と同程度の時間で処理できた。開発した粒子に対し、抗体は他の10倍という高い吸着量を示したため、同粒子が抗体に対して優れた吸着選択能力を示すことが分かった。
今後は実用化に向けて、ユーザーへのサンプル提供を進めていく予定としている。
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