SIPの取り組みで、革新的燃焼技術のプログラムは、燃焼現象の物理モデル化や、モデルベースのエンジン制御システムの構築を達成した。これらの知見を生かし、将来的には「オンボードキャリブレーション」を目指す。これについて山崎氏は次のように説明した。
「現在のエンジン制御では運転の仕方によって燃費の良しあしなどに差がつくが、その人の運転に合わせた目標値やモデルのパラメータを設定することで、運転の仕方に影響されず燃費を向上することができるようになる。世界中で燃費が向上し、CO2排出が減らせる。さらにその先には、『この人、いつもと運転が違うな』というところから、その人の健康状態などを把握できるようになると考えている。その時には、クラウドで処理することと、ECUの高速処理で対応するものを分ける必要がある」(同氏)
エンジン制御の高度化に向けて、今後も技術進化が求められる。これについて、山崎氏は「ECUは、20年前のPCレベルの計算性能しかない。ここで使えるように計算モデルを軽くする必要がある。今後、クロック数が上がってきても、ECUで演算すべきものと、そうでないものを分けなければならない。計算速度とそれに見合ったモデルは、AICEとの取り組みと連動しながら検討していく」と説明。
また、エンジン制御とAIの融合を進めていく上では、「同じセンサーで同じ指標をとっているとAIが限界を超えられない部分がある。別のセンサー、違う視点でのデータ取得を進めることも必要になってくると考えている。そうすることで、違う領域に踏み込めるのではないか。さらに、モデルを使った車両とエンジンの協調に向かっていくことも必要だ」(山崎氏)としている。
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