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世界自動車市場前年割れの衝撃、成長鈍化が前提の生き残り策に舵を切れIHS Future Mobility Insight(10)(2/3 ページ)

» 2019年01月10日 10時00分 公開

「選択と集中」で成長が鈍化した自動車市場を生き残る

 自動車市場の成長鈍化は2019年以降(2024年まで)も続くと予想し、2020〜2021年を中心に、LVのグローバル生産台数予測の大幅な下方修正を実施した。その主因は、やはり欧米と中国になる。北米では、GM(General Motors)、FCA(Fiat Chrysler Automobile)、フォード(Ford Motor)の「デトロイト3」が、メキシコ現地化政策の変更を余儀なくされている。

 欧州も、トルコ経済悪化の影響と域内販売停滞に加え、輸出が伸び悩んでいる。中東アフリカ地域も、米国のイラン核合意離脱や経済制裁再開に伴う市場減速などが影響し、短期を中心に下方修正をしている。

 ただし、インドを筆頭とした新興市場は、規模拡大に貢献するはずだ。世界のLV生産台数に対するインドの地域別比率は、2017年に5%だったが、2030年には9%に達する見込みだ。

 このように、自動車市場の成長鈍化が鮮明になる中で、各自動車メーカーはどのような生き残りを図ろうとしているだろうか。そこで、IHS Markit Automotiveの調査に基づく、2030年における主要自動車メーカーの自動車生産台数の地域別比率予測を見ていこう(図3)。

図3 図3 2030年における主要自動車メーカーの自動車生産台数の地域別比率予測(クリックで拡大)

 中長期的に台数成長が限定的となる状況では、これまでグローバルで複数地域に広げてきた事業展開から、主力地域の絞り込みを行うことが重要になる。「CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)」に代表される新規技術や事業への投資が必要となる一方で、従来通りの「幅広い市場で台数を販売する」というビジネスモデルは岐路に立たされている。今後は「量」よりも「質」が求められる時代だ。地域ごとのニーズを把握し、「事業の選択と集中」で投資の在り方を見極める必要がある。各社とも2020年には投資計画の変更と、新たなモデルの投入が求められるだろう。

 1000万台クラスの年間販売台数規模を持つ自動車メーカーであっても、事業の絞り込みは必要になるだろう。実際、フォルクスワーゲン(Volkswagen)グループは、欧州と中国を軸にCASEを展開している。GMは北米と中国以外の市場で段階的に“整理”を始めており、グループPSA(旧 PSA Peugeot Citroen)は、軸足と経営資源を欧州に集中させている。

 一方、トヨタ自動車は、緩やかに連携するグループ企業内で地域軸と事業軸の役割分担を進め、新興国市場はダイハツ工業、インド市場はスズキが担当している。そして、トヨタ自動車本体はCセグメント以上のモデルとCASEの開発に注力している。こうした動きは2019年以降もさらに加速するだろう。

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