半導体メーカー各社のIoT-Engineの開発キットを手掛けるユーシーテクノロジは、4台のミニカーとミニカーを操作するコントローラー、ミニカーの駐車スペースにIoT-Engineを組み込んで6LoWPANによる無線通信で連携させるとともに、クラウド上で駐車スペースの満空情報を示すデモを披露した。
このデモで興味深いのは、4台のミニカーとそれらを操作するコントローラーに異なる半導体メーカーのIoT-Engineが搭載されているものの、アプリケーションの共通化が図られていることだ。それぞれのマイコンは、ルネサス エレクトロニクスのRX231、東芝マイクロエレクトロニクスの「TX03 M367」、Nuvoton Technology(ヌヴォトン)の「Nano120」、STMicroelectronics(STマイクロ)の「STM32L4」と異なるが、モーターを駆動するPWM制御やGPIOなど物理層に関わるソフトウェアを作り込む一方で、ミニカーの動作制御やコントローラーのアプリケーションは共通化している。
IoT-Engineの構想では、アプリケーションの移植が容易なことも特徴になっており、それを実証するデモになっている。
ヌヴォトンとSTマイクロのIoT-Engine関連の展示は、従来品を紹介するのにとどまっていた。
ただし、両社のその他の展示で共通していたのが、Armの最新プロセッサコア「Cortex-M23/33」を搭載する製品のセキュリティ性能を示すデモだ。Cortex-M23/33は、従来の「Cortex-Mシリーズ」と異なり、Armのセキュリティ技術「TrustZone」を利用できることが特徴になっている。
ヌヴォトンはCortex-M23搭載品、STマイクロはCortex-M33搭載品を用いて、マイコンレベルの製品であっても高いセキュリティ性能を実現できることを示した。IoT-Engineもネットワークにつながることが前提である以上、Cortex-M23/33を搭載するラインアップが求められるかもしれない。
IoT-Engineの普及に向けて最も重要なのは、リアルタイムOSとして用いられる「μT-Kernel 2.0」の浸透だろう。国内リアルタイムOSユーザーの60%をTRON系OSが占めるといわれているが、まだその多くはμITRONの使用を継続している。μT-Kernel 2.0は、IoTに求められる仕様を満たすリアルタイムOSであり、μITRONの後継として期待がかかる。
このμT-Kernel 2.0は、IEEE(米国電気電子学会)が小規模組み込みシステム向けリアルタイムOSの国際標準として採用し、2018年8月に正式に「IEEE 2050-2018」として標準化が完了している。無事にIEEEの国際標準になったことを展示各社は前向きに捉えており、今後のIoT-Engineの展開を押し上げる材料になるかもしれない。
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