2018年11月13日〜14日、東京都内において「防衛装備庁技術シンポジウム2018」が開催された。同シンポジウムのポスターセッションを中心にレポートしよう。
2018年11月13日〜14日、東京都内において「防衛装備庁技術シンポジウム2018」が開催された。一般の来場者も多く見られ、安全保障技術研究推進制度もあってか、企業担当の来場も多くあったようだ。オーラルセッションの取材はNGのシンポジウムだが、ポスターセッションについてはOKであり、本稿ではポスターセッション中心にレポートしていく。
同シンポジウムのポスターセッションは大まかに分けて、航空装備研究所、艦艇装備研究所、陸上装備研究所、電子装備研究所、先進技術推進センター、先端技術ブースなどから構成されていた。空気感としては、直近であれば「CEATEC JAPAN 2018」にあった「Startup&Universityエリア」に近いものだった。
航空装備研究所と艦艇装備研究所、陸上装備研究所のポスターセッションから見ていくと、無人化とデータリンクの他、MR(複合現実)コックピットの実現に向けた研究といったものもあり、民間から見ても距離感が近い展示が多くあった。特に、近年において顕著だが、先端技術がエンタープライズもしくはコンシューマーのレベルまで到達する時間は短くなっている。
例えば「戦闘機用エンジンの主燃焼器用燃料噴射弁」については、3Dプリンタ(部材はステンレス)を採用することで、複雑で滑らかな内部油路形状を実現し、従来よりも圧力損失で最大10%の低減に成功している。現状ではL字型導管部のみと部分的な採用だが、形状は有機物的だ。これは3次元的な解析と構造最適化によるもので、車両のフレームやジョイントパーツなどでも同じ動きがある。ただ大量生産にはまだ向かないため、部分的な採用にとどまっているが、この点は3Dプリンティング側の進化で変化していくだろう。
艦艇装備研究所においてもデータリンクや水中リアルタイム通信といったほか、NDS(防衛省規格)防振ゴムによる耐衝撃ぎ装の検討があった。実艦を使用した水中爆発試験において、設計想定よりも高い衝撃レベルが生じる可能性があり、機器の誤動作や破損を防止するため、NDS防振ゴムを耐衝撃マウントとして使用した場合に、衝撃を減衰できるかというもの。
耐衝撃マウントとしては、ある程度の衝撃の大きさまでは、どのサイズでもほぼ同様の衝撃緩衝特性であることが判明しており、今後は特定のデータベースの充実や交換サイクルを研究していくという。衝撃はどこにでもあり、その対策を必要とするシーンは多く、データベースの充実のメリットは大きい。この点から民間企業との協業も視野にあるようだ。
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