EVの進化は生産技術に懸かっている、「車体重量半減」「全固体電池の量産」 : 電気自動車 (2/2 ページ)
電動車に必要となる車体の軽量化について、坂本氏は「従来の半分の重さにしたい」と述べた。そのためには軽量化材料を多用する必要がある。鉄のクルマに対し、アルミニウムを全面的に採用すると25〜30%、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を全体に使ってようやく半分近くまで軽量化できるという。しかし、「CFRPは、量産車としては許容できるコストではない。そのためにはそれぞれの素材の良さを生かしながら、組み合わせて使いこなしたい」(坂本氏)。同氏は軽量化がどんなクルマにも必要になると強調した。環境規制の強化に伴い、鉄だけでクルマを作る時代は2020年代にも限界を迎えるという。アルミニウムと鉄の併用だけでは限界があり、CFRPを使う必要性が高まると見込む。
鉄よりもコストが高い素材を量産車でより多く使うには、部品点数を減らしてコストを成立させることが1つのアプローチになる。「エクストレイルのバックドアを樹脂化した時には、これまで11個の部品を溶接していたのを、成型性のよさを生かして2つの部品にした。こういうことをますますやれるようにならなければならない」(坂本氏)。また、従来は部品を足していた防振や制震、吸音といった機能を、設計や構造の工夫で実現できれば部品点数の削減につながると説明した。
異なる素材同士を接合する技術も「これが一番というものは他社を調べても見えてこない」(坂本氏)。現状でも接着剤、リベット留めなど機械締結、摩擦による接合などさまざまな手法があるが、接着剤は経年劣化に対する耐久性が、リベット留めは生産設備や重量増、外観を損ねるなどの課題がある。
CFRPは、樹脂含浸成形(RTM)やオートクレーブ、プリプレグ、シートモールディングコンパウンドなどのさまざまな工法があるが、量産車で使うにはいずれも一長一短なのが現状だという。RTMは並べた炭素繊維に樹脂を射出するが、繊維が動かないようコントロールすることが難しい。少量生産向けのオートクレーブよりも生産性が優れるが、量産には及ばないという。シートモールディングコンパウンドは、生産性が高いが強度に課題がある。
また、樹脂の流れ方によっては成形した部品の端の強度が保てず、大きめに作って余分な部分をカットするような作業も発生しうる。「カットするといってもどう切るのか、CFRP全般の課題だ。少量生産なら問題なくても、量産となると厳しいことが多い。リサイクルやリユースを考えることも不可欠だ」(坂本氏)。
生産技術の進化がなければ、TNGAもハイブリッドシステムの向上も成立しない
他社がまねできない技術には、工作機械メーカーの協力が不可欠――。「第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)」の特別講演で、「TNGA(Toyota New Global Architecture)」やエコカー戦略を支える生産技術について、トヨタ自動車 パワートレーンカンパニー ユニット生産技術領域 常務理事の近藤禎人氏が語った。
電池を分解せずに電解液中のリチウムイオン挙動観察に成功、トヨタが世界初技術
トヨタ自動車は、リチウムイオン電池が充放電する際に電解液中を移動するリチウムイオンの挙動を、ラミネートセルのままリアルタイムに観察する手法を開発した。X線を透過させにくい重元素を含む電解液を使用することにより、放射光X線でリチウムイオンの濃度を撮影できる。
CFRPは「扱いが難しいナマモノ」、量販モデルでの採用はトヨタも苦戦
トヨタ自動車は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)をプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」の新モデルに採用した。「大量生産でもCFRP部品の品質を確保するノウハウが蓄積できた。他の部位でCFRPを採用しても量産に対応できるだろう」(同社)といえるまでの苦労とは。
炭素繊維強化プラスチックの世界市場、自動車用で熱可塑性が急成長へ
富士経済は、2030年までの炭素繊維複合材料の市場見通しを発表した。市場規模は2015年比4倍の4兆9058億円に拡大する。熱硬化性の炭素繊維強化プラスチックが9割以上を占めるが、炭素繊維強化熱可塑性プラスチックが自動車向けを中心に大きく伸長する。
熱可塑性CFRPで自動車用シャシー、成型が1分間で完了し高速接合も
NEDOと名古屋大学ナショナルコンポジットセンターは、熱可塑性樹脂と炭素繊維を混練する「LFT-D工法」を用いることで、熱可塑性CFRPだけを材料とした自動車用シャシーの製作に成功した。
基板に実装できる全固体電池、IoTデバイスの電源として期待大
TDKは、「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16〜19日、幕張メッセ)で、基板に実装できる全固体電池「CeraCharge(セラチャージ)」を展示した。国内初披露となる。IoT(モノのインターネット)やRTC(リアルタイムクロック)デバイスの電源などでの利用を見込んでいる。
全固体電池は材料から生産技術まで幅広い課題、オールジャパンで解決目指す
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、全固体リチウムイオン電池の研究開発プロジェクトの第2期を開始する。全固体リチウムイオン電池の製品化でボトルネックとなっている課題を解決する要素技術を確立するとともに、プロトタイプセルで新材料の特性や量産プロセス、車載用としての適合性を評価する技術も開発する。期間は2018〜2022年度で、事業規模は100億円を予定している。
日立造船が全固体リチウムイオン電池を開発、車載用に2020年に製品化
日立造船は、「第7回国際二次電池展」において、全固体リチウムイオン電池を展示した。既に試作品が完成しており、−40〜100℃の範囲で正常に充放電することを確認している。2020年に車載用を主なターゲットとして製品化することを目指す。
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